赤かび病抵抗性が異なるコムギ育成系統におけるかび毒配糖体蓄積性の解析

タイトル 赤かび病抵抗性が異なるコムギ育成系統におけるかび毒配糖体蓄積性の解析
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2015~2017
研究担当者 中川博之
久城真代
発行年度 2017
要約 赤かび病抵抗性の異なるコムギ育成系統50点中のデオキシニバレノール(DON)濃度と、植物中DON代謝物であるDON-3-グルコシド(D3G)濃度を解析したところ、D3G濃度はDON濃度と高い相関を示すが、赤かび病発病度とDON・D3G濃度との相関は低い。
キーワード 麦類赤かび病(Fusarium Head Blight(FHB))、コムギ、デオキシニバレノール(DON)、DON-3-グルコシド(D3G)、高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)
背景・ねらい 麦類赤かび病(FHB)はコムギの重要病害であり、原因菌(フザリウム属菌の一種)が比較的冷涼な地域にも分布することから世界中で問題となっている。わが国ではコムギの開花期と降雨が重なりやすいことから圃場での完全防除が困難とされている。赤かび病に罹病した子実は、収量低下のみならず、赤かび毒素の一種・デオキシニバレノール(DON)を蓄積しやすいことから、食品衛生上も問題となる。2002年に原麦中DONの暫定基準値が設定され、農林水産省より麦類のDON汚染低減のための指針が出されていることから、コムギ品種と赤かび病抵抗性もしくはDON蓄積性との関連については、多くの知見がある。
一方、近年欧州で報告された植物酵素によるDONの主要な代謝物であるDON配糖体:DON-3-グルコシド(3-β-D-glucopyranosyl-4-deoxynivalenol;D3Gと略す)は、通常のDONに注目した分析法では検出されないことから「マスクドマイコトキシンmasked mycotoxin」として問題視されている(図1)。かび毒配糖体の動物での毒性については不明であるが、動物体内で糖が外れてかび毒本体の毒性を発揮する可能性があり、他の配糖体も含めて現在「モディファイドマイコトキシンmodified mycotoxin」という名称が提唱されている。
現時点でコムギ品種とD3G蓄積性との関連について、ほとんど知見がないことから、コムギの膨大なコレクションを有する国際トウモロコシ・コムギ改良センター(CIMMYT、メキシコ、エルバタン本部)と共同研究契約を締結し、赤かび病抵抗性の異なるCIMMYTコムギ育成系統50点中のDONならびにD3G濃度について、単一試験室で妥当性確認された高速液体クロマトグラフ-タンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた分析法で解析する。
成果の内容・特徴
  1. CIMMYTの試験圃場において、赤かび病菌(フザリウム属菌)の自然感染を強制誘発し、赤かび病抵抗性の異なるコムギ育成系統50点について、発病度の広がりがある(低発病~高発病)状況を作出している(表1.発病度=1穂当たりの発病指数×発病穂率)。
  2. CIMMYTで収穫後送付された子実粉砕物50点のLC-MS/MS法によるDONならびにD3G濃度の測定結果より、DONの汚染程度は低(sub-ppm)・中(暫定基準値近くの1ppm位)・高(数ppm)水準まで広範囲にわたる(表1.DON)。D3G濃度はDON濃度と高い相関を示す(表2.r=0.91,図2.)が、発病度とD3G・DON濃度との相関は低い(表2.r=0.32および0.36)。
  3. 表1(D3G/DONモル比平均)より、DONの配糖体化率は25%程度であり、欧州での報告(10%程度)より高い比率である。
成果の活用面・留意点
  1. CIMMYT保有のコムギ育成系統50点におけるデータである。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2017/nfri17_s17.html
カテゴリ 病害虫 抵抗性 とうもろこし 品種 防除

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