パン生地製造過程の代謝産物変化

タイトル パン生地製造過程の代謝産物変化
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 食品研究部門
研究期間 2016~2017
研究担当者 中村敏英
冨田理
齋藤勝一
発行年度 2017
要約 パン生地発酵過程において、ガス抜きや使用パン酵母量の違いはパン生地中の代謝産物組成へ影響を与える。パン生地には焼成パンの比容積と相関がある代謝産物が含まれており、発酵の指標となる可能性がある。
キーワード パン酵母、パン生地、発酵、メタボローム解析
背景・ねらい パン生地発酵過程において、パン酵母はパン生地膨張だけでなく、パン生地中の代謝産物量の変化に大きく関わる。パン酵母は糖やアミノ酸等を消費する一方、有機酸やアルコール類、エステル類等を生成する。これらの代謝産物は焼成パンのフレーバー形成に大きく寄与するが、発酵のどのタイミングで生成するのかなど不明な点も多い。発酵の進行状況と代謝産物の変動を関連付けることができれば、発酵工程完了の最適なタイミングの指標となる成分プロファイルも明らかになることが期待される。
本研究は、パン生地のメタボローム解析により、発酵過程における代謝産物の変動を網羅的に解析し、そこから得られたプロファイルを活用することでパン製造の効率化を目指している。
成果の内容・特徴
  1. 測定における代謝産物の増減を抑えるために、パン生地を短時間加熱処理することによりパン酵母の代謝反応を停止させる。
  2. 小麦粉、砂糖、塩、パン酵母を原料としてストレート法で製造したパン生地に含まれる水溶性代謝産物をNMRで、揮発性代謝産物をGC/MSでそれぞれ測定する。
  3. 代謝産物プロファイルの主成分分析では、パン生地発酵過程でのガス抜きが水溶性代謝産物に与える影響は小さいが、揮発性代謝産物には影響がみられる(図1)。
  4. 第一主成分(PC1)は発酵時間に依存していることから、発酵過程における代謝産物の変動は発酵時間の影響が大きく、特に水溶性代謝産物では顕著である(図1)
  5. パン酵母の量を2倍した生地では、第一主成分では標準生地の半分の発酵時間であることから、発酵の進行が約2倍になる(図1)。
  6. パン酵母の量を2倍にすると、様々な代謝産物の中でも特にコハク酸の生成量が多くなる(図2)。
  7. 揮発性代謝産物プロファイルの部分的最小二乗回帰分析では、焼成後の比容積と相関のある代謝産物が見出される(図3)。回帰モデルの説明における重要度(VIPスコア)が1以上の代謝産物は12種存在する。比容積と最も相関性が高い代謝産物はγ-ノナラクトンである。
成果の活用面・留意点
  1. 比容積と相関のある代謝産物については、これをマーカーとして用いることで最適なタイミングで発酵を完了することが期待できるが、専用の検出器等が必要である。
  2. パン生地のメタボローム解析により得られた代謝産物プロファイルは、様々な酵母のデータを蓄積することで自然界等から新規に分離したパン酵母の特徴付けに利用できる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nfri/2017/nfri17_s07.html
カテゴリ 小麦 メタボローム解析

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