ブタマクロファージの新しい不死化法

タイトル ブタマクロファージの新しい不死化法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2014~2017
研究担当者 竹之内敬人
木谷裕
鈴木俊一
中井美智子
淵本大一郎
月本光俊
新開浩樹
佐藤充
上西博英
発行年度 2017
要約 レンチウイルスベクターを用いて、Simian virus 40 large T遺伝子とブタテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子の2種類を同時に導入する新手法により、ブタマクロファージを不死化できる。
キーワード ブタマクロファージ、不死化細胞株、レンチウイルスベクター、Simian virus 40 Large T遺伝子、ブタテロメラーゼ逆転写酵素遺伝子
背景・ねらい 養豚業においてブタ感染症の発生は多大な経済的損失を引き起こす。原因となる細菌やウイルスなどのブタ病原体の性状を解析するために、培養細胞を用いたin vitro評価系が利用されている。特に、動物の生体防御において重要な役割を持つマクロファージの細胞株は、宿主と病原体との相互作用を解析するための有効なツールとなる。しかしながら、これまでに報告されているブタマクロファージ細胞株では、初代培養ブタマクロファージの特性を十分に保持できておらず、in vitroモデルとしての有用性が低いことが指摘されている。そこで本研究では、ブタ感染症研究に有用なブタマクロファージの不死化細胞株の作製法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 本手法では、不死化遺伝子としてSimian virus 40 large T(SV40LT)遺伝子とブタテロメラーゼ逆転写酵素(porcine telomerase reverse transcriptase: pTERT)遺伝子を用いる。これら2種類の遺伝子を、レンチウイルスベクターを用いてブタ腎臓由来の初代培養マクロファージに同時に導入すると、不死化された細胞(Immortalized Porcine Kidney-derived Macrophages:IPKM)が出現してくる。
  2. IPKM細胞は、初代培養ブタマクロファージの形態をよく保持しており(図1)、倍加時間が約4日間で、5ヶ月以上にわたり増殖性を示す。免疫染色の結果、ほぼすべての細胞でマクロファージに特徴的な分子であるCD172aやCD16(図2)、Iba-1、MSR-Aの発現が確認される。その他、MHC-IIやCD163を発現する細胞も存在する(図2)。
  3. マクロファージ機能としては、蛍光標識したポリスチレンビーズあるいは大腸菌を貪食する作用や、Lipopolysaccharide(LPS)刺激による炎症性サイトカイン(TNFα、IL-1β)の産生が観察される(図3)。また、LPS前処理したIPKM細胞においては、インフラマソーム活性化に伴うIL-1βの成熟化の促進も観察される。これらの結果より、IPKM細胞は初代培養ブタマクロファージの性質を保持した細胞株であることが示唆される。
  4. IPKM細胞樹立と同様の手法を用いることで、遺伝子改変ブタ(低密度リポタンパク質受容体欠損ブタ)の血液由来マクロファージの不死化にも成功している。
成果の活用面・留意点
  1. 本手法を用いることで、様々な品種のブタ、遺伝子変異を持つブタ、またブタの各組織常在性のマクロファージの不死化細胞株の作製が期待できる。
  2. 作製されたブタマクロファージ不死化細胞株については、今後、ブタ病原体の性状解析のためのin vitro評価系への利用が期待される。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2017/nias17_s15.html
カテゴリ 品種

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