| タイトル | 遺伝情報を利用して気候変動による樹木の分布変化を明らかにする |
|---|---|
| 担当機関 | (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
松本 麻子 上野 真義 内山 憲太郎 中尾 勝洋 津山 幾太郎 青木 京子 玉木 一郎 津村 義彦 藤井 沙耶花 |
| 発行年度 | 2019 |
| 要約 | 日本の森林の重要な構成樹種であるスダジイとモミ属 3 種を対象に、遺伝情報や種の分布情報、気候要因を複合的に解析し、これらの種が過去の気候変動の過程でいかに分布を変えて現在に至ったのかを明らかにしました。 |
| 背景・ねらい | 日本の森林の重要な構成樹種であるスダジイとモミ属3種を対象に、遺伝情報や種の分布情報、気候要因を複合的に解析し、これらの種が過去の気候変動の過程でいかに分布を変えて現在に至ったかを明らかにしました。スダジイは最終氷期最寒冷期に九州以南だけでなく関東南部などにも生育可能な環境があり、現在の地域性の基盤がすでに成立していたこと、モミ属では異なる種の分布が重なる地域があり、種間交雑が生じた遺伝的な痕跡が現在の個体群にみられることなどが分かりました。最終氷期の後、スダジイは分布域を拡大し、モミ属は縮小したと考えられます。このような分布変遷の推定は、将来の気候変動に対する個体群応答の予測にも応用できます。 |
| 成果の内容・特徴 | 森林を構成する樹種の現在の分布域と遺伝的地域性 日本は国土の約2/3を森林が占める緑豊かな国です。地形は起伏に富み気候も一様ではないため、森林も実に多彩です。常緑広葉樹林の主要な構成樹種であるスダジイは温暖な環境を好み、東北南部から沖縄県八重山諸島にまで分布が広がっていますが、遺伝解析の結果から、地域性が異なる4つのグループ(奄美群島以南、九州南部付近、九州から新潟までの日本海側、関東・近畿・四国の一部)に分化していることが分かりました。 冷涼で湿性な環境を好むモミ属のシラビソ、ウラジロモミ、モミでは、モミが秋田県から鹿児島県の屋久島まで広範囲に、シラビソとウラジロモミは福島県から中部地方に分布します。さらに同じ地域でみると、モミ、ウラジロモミ、シラビソの順に低標高から高標高に向けて分布域を画しています。この3種は遺伝的には互いに明確に異なっていることが分かりましたが、種の中での地域性はそれほど明瞭ではありませんでした。
最終氷期最寒冷期の推定分布域 これらの樹種は、どのような分布の変遷を経て今に至ったのでしょうか。現在の分布域と気象データから生育条件を探り、過去の気候変遷に投影して生育域を推定しました。 スダジイは約2万1千年前の最終氷期最寒冷期(LGM)に比較的温暖だった九州南部や南西諸島に逃避していたとされますが、現在、遺伝的地域性が異なるグループが分布する九州から新潟までの日本海側や関東・近畿・四国の一部などにも、LGMに生育可能な環境があったことが分かりました(図1)。現在みられる遺伝的地域性の成立に関するモデル推定では、LGM以前、すでに地域性は形成されていて、各地の個体群はその地域で生き延びていたことが推察されました。また、モミ属ではLGMの分布域は各種とも現在よりかなり広く、東北や四国ではモミとウラジロモミの分布の重なりも検出されました。それらの地域では、モミなのにウラジロモミのミトコンドリアDNAを持つ個体や、ウラジロモミなのにモミのものを持つ個体が検出されており、分布の重複時に種間交雑が生じた可能性が推察されました(図2)。 遺伝情報と将来予測 LGM以降、日本の平均気温は約5~7度上昇したとされます。その過程でスダジイは分布域を拡大し、モミ属は縮小しました。このような分布変遷の推定手法は、将来の気候変動に対する個体群分布の推定にも応用できます。今後、環境条件と遺伝的地域性の統合解析から気候変動に対する個体群の応答を明らかにし、森林分布などについてのより精度の高い将来予測を行っていきます。 |
| 研究内容 | https://www.ffpri.affrc.go.jp/pubs/seikasenshu/2019/documents/p40-41.pdf |
| カテゴリ |
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