低温メタン発酵消化液を施用した水田土壌における窒素無機化特性

タイトル 低温メタン発酵消化液を施用した水田土壌における窒素無機化特性
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究期間 2016~2017
研究担当者 中村真人
日高平
折立文子
山岡賢
発行年度 2018
要約 低温メタン発酵消化液を水田で液肥利用する場合、消化液に含まれる有機態窒素の無機化に伴うアンモニア態窒素の増加割合は3~13%と少ない。そのため、有機態窒素の無機化を考慮せずに、消化液のアンモニア態窒素を指標として施肥設計できる。
キーワード 低温メタン発酵、アンモニア態窒素、エネルギー、メタン
背景・ねらい メタン発酵による汚泥のエネルギー利用が推進されているものの、小規模処理施設(小規模下水処理施設や農業集落排水施設等)ではメタン発酵事業の採算性が厳しい。それに対して、発酵温度を一般的な温度(約35℃または約55℃)より低く設定する低温メタン発酵と消化液の液肥利用は、エネルギー効率向上やコスト削減が期待される。既往の研究(発表論文1)により、発酵温度を25℃以上に設定し、メタン発酵期間を十分に確保すれば通常と同程度のメタンが回収できることが示されているが、低温条件が消化液の肥料特性や施用に伴う環境影響は未解明である。作物要求量に合わせた施肥設計をするためには、消化液に含まれる有機態窒素の無機化に伴うアンモニア態窒素の供給量を把握しておく必要がある。また、消化液に含まれる有機物の施用は、水田土壌からのメタン発生量を増加させる懸念がある。そこで本研究では、低温メタン発酵消化液を施用した水田土壌の嫌気培養試験により、土壌施用後の窒素無機化・メタン発生特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 低温メタン発酵消化液(15~30)のアンモニア態窒素濃度は1100~1300mg/Lと液肥として利用されている一般的なメタン発酵消化液と同程度であり、速効性の肥料として利用可能である(表1)。
  2. 嫌気培養試験は、図1に示す条件により行われたものである。培養期間における低温メタン発酵消化液由来有機態窒素の無機化に伴うアンモニア態窒素の増加割合は3~13%であり、メタン発酵原料である脱水汚泥に比べて、格段に少ない。発酵温度で比較すると、発酵温度が15℃の場合に無機化量が比較的多いものの、発酵温度間で大きな違いはみられない。また、低温の場合の増加割合は一般的な発酵温度である35℃(中温)の場合と同程度である。そのため、低温メタン発酵であっても、メタン発酵過程で有機態窒素の分解が十分に進んでおり、土壌施用後の有機態窒素の無機化を考慮せずに、消化液のアンモニア態窒素量を指標として施肥設計できる(図2)。
  3. 水田土壌におけるVS(強熱減量、有機物含有量の指標)あたりの低温メタン発酵消化液由来のメタン発生量は、稲わらや脱水汚泥よりも小さく、稲わらの1/4~1/3程度である(図3(a))。一般的な水田への消化液施用量(6kgNH4-N/10a)・稲わらすき込み量(500kg/10a)を考慮すると、どの発酵温度条件でも、稲わらの1/10程度であり、消化液施用がメタン発生に及ぼす影響は小さい(図3(b))。
  4. 既往の研究と本成果から、発酵温度が25℃以上であれば、エネルギー効率の改善と適切な液肥利用が両立可能である。
成果の活用面・留意点
  1. 本成果は、農業集落排水処理施設や小規模下水処理場等の小規模生活排水処理施設でメタン発酵を導入する際に活用できる。
  2. 低温メタン発酵は、発酵槽での滞留時間を一般的な発酵温度よりも長くとる必要がある。本成果は、滞留時間が十分に長い消化液を用いた場合の結果である。
  3. 実際に現場に適用するためには、本成果で検討しなかった項目(原料に由来するリスク等)についても検証する必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2018/nire18_s12.html
カテゴリ 肥料 コスト 水田 施肥 メタン発酵消化液

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