閉花受粉性イネ突然変異体spw1-cls1の低温条件下における開花

タイトル 閉花受粉性イネ突然変異体spw1-cls1の低温条件下における開花
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2004~2017
研究担当者 吉田均
大森伸之介
小池説夫
林高見
山口知哉
黒木慎
発行年度 2018
要約 イネの突然変異spw1-cls1による開花しない性質は自然交雑を効果的に抑制でき、種子の純度を確保するために有効である。特に、出穂前2~3週目の低温は開花を著しく促進するが、日中の高温により開花が抑制される。
キーワード イネ、閉花受粉、SPW1遺伝子、花粉飛散、温度感受性、鱗被
背景・ねらい イネは極低頻度ではあるが花粉飛散を介して自然交雑するため、多様な性質を持つ品種群を同時に栽培する際にはこれを防ぐ的確な区分管理技術が求められる。イネの突然変異superwoman1-cleistogamy1 (spw1-cls1)による開花せずに受粉する性質(閉花受粉性)は花粉を飛散させず、自然交雑を防ぐ手段として有望である。spw1-cls1では開花を引き起こす花器官である鱗被の形態が変化し閉花受粉性となるが、その原因は鱗被の形態を決定する転写因子SPW1のアミノ酸置換変異である。変異型SPW1は機能低下を起こすが、低温下ではその機能を回復することがタンパク質レベルで示されているが、植物体レベルでの低温反応性は明らかとなっていない。
そこで本研究では、低温条件下における同変異による閉花受粉性の安定性を評価する。また、低温感受性の高い生育時期を特定するとともに、日中の温度変化の影響を明らかにし、同変異による交雑防止技術の実用化に必要な情報を提供する。
成果の内容・特徴
  1. spw1-cls1を国内のさまざまな地域で栽培すると、出穂前の平均気温が低いほど開花率が上昇する(表1)。人工気象器を用いて出穂前に低温処理を行うと、温度が低くなるにつれて鱗被は短く厚みを増していく(図1)。このことから、spw1-cls1は出穂前に低温に遭遇すると鱗被の形態が正常に復帰し、開花するようになると考えられる。
  2. spw1-cls1の出穂前のさまざまな時期に、人工気象器を用いた低温処理(日中24℃/夜間20℃)をすると、特に幼穂形成後2~3週間目を含む低温処理区において開花率が高い(表2)。このことから、この時期がSPW1の機能を介した鱗被の形作りに重要と考えられる。同変異を持つ系統を野外栽培する場合には、この時期の低温遭遇に注意が必要である。
  3. 野外栽培においては、日中、夜間ともに温度は一定でなく、連続的に変化する。これを模倣するため、人工気象機での日中25℃/夜間18℃の低温処理中に、日中の数時間だけ高温処理を挿入すると、開花率は著しく減少する(表3)。このことから、夜温が低くても日中の気温が30℃程度まで上昇する地域においては、spw1-cls1の開花が抑制される可能性がある。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究成果は、糯品種や有色素品種などにおける交雑防止技術を確立するための参考となる。
  2. 本変異を保有する系統を野外栽培する場合、栽培適地の選定、不時開花の予測などに本研究成果を活用することができる。
  3. 本変異を利用した品種の開発と利用に関しては、農研機構との交渉が必要である。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2018/nias18_s05.html
カテゴリ 管理技術 受粉 品種

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