シート状熱交換器を流水中に設置すると高い熱交換特性が得られる

タイトル シート状熱交換器を流水中に設置すると高い熱交換特性が得られる
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究期間 2014~2018
研究担当者 後藤眞宏
奥島里美
三木昂史
高杉真司
舘野正之
小間憲彦
木村繁男
小松信義
発行年度 2018
要約 水熱源ヒートポンプのシート状熱交換器を農業用水路など流速10m/min以上の流水中に設置することで、土中設置に比べて約15倍の熱交換性能が期待できる。水路設置はエキスパンドメタルと一体化させる簡易な工法で、水路管理者でも施工できる。
キーワード シート状熱交換器、水熱源ヒートポンプ、農業用水路、エキスパンドメタル
背景・ねらい 農業施設では、空気や地下水などを熱源として、暖房、冷房や除湿が行え、エネルギー消費とランニングコストを削減する技術としてヒートポンプが導入されている。近年、熱交換器を空気や土中よりも効率良く熱交換が行われる水中に設置する研究報告がある。農村地域にはため池や井戸などよりも速い流水条件が得られ高い熱利用が期待できる基幹的農業用水路が約5万km敷設されているが、これまで熱交換器を農業用水路内の流水中に設置した事例はない。そこで、農業用水路における流水熱利用を図る目的で、農村工学研究部門(つくば市)の実験棟内に農業用水路を模した実規模水理模型(幅1.6m、側壁高1.6m、長さ15m)にシート状熱交換器(高さ0.9m×長さ5.6m、φ6mm細管×117本、図1)を設置して、水理条件や設置方法の違いによる熱交換特性を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 熱交換器と12kWのヒートポンプを接続し、水路内流向と反対方向に熱媒を循環させて、熱交換器の入口・出口温度、水路内水温、熱媒流量を計測する(図1)。熱交換器の熱交換特性は、流水熱と熱交換器の熱交換量を熱交換器内外温度差で除した熱交換率(kW/K)を算定し、熱交換率を熱交換器の熱交換可能な投影面積で除した熱通過率(kW/(K・m2))で評価する。
  2. ヒートポンプを暖房および冷房運転した結果、暖房冷房運転ともに水路内流速の増加に伴って熱通過率が増加する。一方で、熱交換器を循環させる熱媒流量が増加すると熱通過率も増加するが、熱通過率と流速ほどの関係性は見られない(図2)。
  3. 流水条件下(水路内流速10m/min、冷房運転時)の熱交換器の熱通過率は0.255kW/(K・m2)で、静水条件下0.100kW/(K・m2)の約2.5倍、土中設置0.017kW/(K・m2)の約15倍、従来型スリンキー式熱交換器土中設置0.01kW/(K・m2)の約25倍の高い性能が得られる。
  4. 熱交換器を網目状のエキスパンドメタルと一体化すると、流下物から保護でき、かつ撓みなく設置できる(図3左)。設置に要する施工費用は熱交換器単体の約1/3程度で、水路管理者でも施工可能である。
  5. 用水路の流速条件を考慮した実験条件下で熱交換器をエキスパンドメタルと一体化し側壁に沿って設置した時、間隔110mm、水路流速24m/min以上で熱通過率が0.21kW/(K・m2)以上得られる(図4)。ゴミ流入防止用の上流端遮断板(図3右)の有無にかかわらず、同じ熱通過率が得られる(図4)。
成果の活用面・留意点
  1. 農業用水路は農村地域に配置され、水熱源として広範囲で利用することができる。都市化混住化の進展で農村地域には戸建て住宅、集合住宅、コンビニエンスストア、商業施設などが隣接し、農業施設以外の熱利用施設での利用も可能である。
  2. 農業用水路へ設置する際には、水路管理者である土地改良区や水利組合に相談しなければならない。また、用水路での利用がかんがい以外の他目的使用に該当するか未定であり、水路管理者と逐次連絡を取りながら実施していく必要がある。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2018/nire18_s13.html
カテゴリ コスト ヒートポンプ

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