沿岸域における淡水地下水利用深度の調査手法

タイトル 沿岸域における淡水地下水利用深度の調査手法
担当機関 (国研)農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門
研究期間 2015~2018
研究担当者 石田聡
白旗克志
土原健雄
紺野道昭
中里裕臣
吉本周平
発行年度 2018
要約 井戸内の任意の深度に止水のための仕切りを設け、その上部から地下水を揚水する技術である。帯水層内に淡水と塩水が混在する沿岸域において、必要な揚水量・水質を得るための最適な井戸深度を求めることができる。
キーワード 地下水、塩水化、井戸、淡水、パッカー
背景・ねらい 帯水層中に淡水域と塩水域が存在している沿岸域では、地下水を利用するため揚水を行うと、井戸周辺の局所的な圧力減少によって塩水域から淡水域に向かって塩水が浸入し水質が悪化する。井戸深度を浅くすればこの現象は軽減できるが、同時に揚水量も小さくなってしまうので、地下水利用のためには、許容範囲の水質を保てる井戸深度と揚水量の情報が重要となる。この情報を得るためには、それぞれの調査地点において複数の深度で揚水試験を行う必要があるが、そのためには多くの調査井戸を設置する必要があり、コストが割高となって実現は難しい。そこで、井戸内に止水機能を持った仕切りを設け、その上部から揚水することで、1本の井戸で任意の深度の揚水試験を行える調査手法を開発する。
成果の内容・特徴
  1. 本手法は井戸内に止水機能を持つ仕切り(パッカー)を設置して井戸深度を調整し、パッカー上部から揚水することで、井戸深度と揚水した地下水の水質との関係を、1本の井戸で明らかにすることができる(図1)。この方法は1箇所に複数の井戸を必要とせず、調査コストを低減できる。
  2. 試作したパッカー付き揚水装置は(図2)、1本の井戸の内部の任意の深度に設置できるゴム製パッカー、パッカーより上部の任意の深度に設置できる揚水口とこれに接続する揚水ホース、揚水ポンプ、地下水圧・水質を測定するセンサー、揚水量コントローラ等で構成される。
  3. 調査では井戸内の深度別の地下水質を予め測定(検層)する。次に淡水域の目的とする深度にパッカーを下ろして止水し、パッカーより上部に揚水口およびセンサーを設置して設定した揚水量で揚水を行い、揚水される地下水の電気伝導度(EC)等を測定する(図3)。得られた地下水のECが必要とする値より高い場合、同じ井戸でパッカー設置深度を浅くして再度試験を行い、深度と揚水される地下水のECとの関係を求める。
  4. 東日本大震災による津波で地下水が塩水化した宮城県仙台平野南部において、揚水量15L/minで実施した実証試験によると、井戸毎にパッカー深度を調整(4.5~8.5m)して得られた地下水のECは(図4右)、パッカー無し(井戸深度10~15m)で揚水した場合に対して低く(図4左)、井戸深度を浅くすることで耕作により適した地下水が得られることが分かる。
成果の活用面・留意点
  1. 普及対象:沿岸域・島嶼域にて地下水の開発・保全に携わる行政担当者、民間事業者、研究者
  2. 普及予定地域・普及予定面積・普及台数等:開発・保全対象の地下水が存在する沿岸域および島嶼
  3. その他:最初に行う揚水試験ではパッカー下端にも水位計を設置し、パッカーの上下で圧力差があること(孔壁と保孔管の間が遮断されていること)を確認する。同じ井戸でパッカー深度を変えて揚水試験を再度行う場合には、半日~1日程度間隔を開け、検層によって井戸内の深度別の地下水質が揚水前の状態に戻っていることを確認する。適用井戸の条件は、内壁が滑らかなオールストレーナ仕上げとなる。
研究内容 http://www.naro.affrc.go.jp/project/results/4th_laboratory/nire/2018/18_072.html
カテゴリ コスト

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