タイトル | カドミウム低吸収性の水稲品種「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」 |
---|---|
担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター |
研究期間 | 2012~2020 |
研究担当者 |
田村克徳 竹内善信 片岡知守 中西愛 佐藤宏之 田村泰章 黒木慎 石川覚 阿部匡 |
発行年度 | 2020 |
要約 | 「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」は、各々「きぬむすめ」、「にこまる」および「たちはるか」のカドミウム(Cd)低吸収性同質遺伝子系統である。各々の品種により、Cd低吸収性品種の適応地域の拡大が期待できる。 |
キーワード | イネ、カドミウム低吸収性、同質遺伝子系統、きぬむすめ、にこまる、たちはるか |
背景・ねらい | カドミウム(Cd)はごく微量でも長年にわたって摂取すると健康被害をもたらすことが知られており、リスクを下げるためにはCd蓄積が少ない品種が求められている。2015年に品種登録されたCd低吸収性品種「コシヒカリ環1号」は、Cdを含む土壌で栽培してもコメ中のCd濃度が非常に低く、Cd摂取の低減に寄与することが期待されている。しかしながら、「コシヒカリ」の栽培面積は全国の約3分の1(約45万ha)に過ぎないため、他の主要な品種にCd低吸収性を付与し、より広範な地域でのCd低吸収性品種の普及を進めることが必要である。良食味品種「きぬむすめ」(2005年育成)および「にこまる」(2005年育成)は各々約9,000haと約7,000ha普及している。また、多収米品種「たちはるか」(2012年育成)は約300ha普及している。 そこで、「きぬむすめ」、「にこまる」および「たちはるか」のCd低吸収性同質遺伝子系統を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1.「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」は、Cd低吸収性の「コシヒカリ環1号」に、各々「きぬむすめ」を5回、「にこまる」を3回および「たちはるか」を4回戻し交配した後代から育成された、「きぬむすめ」、「にこまる」および「たちはるか」のCd低吸収性同質遺伝子系統である。 2.「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」のCd吸収性は「コシヒカリ環1号」並の"極低"である(図1)。 3.「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」の福岡県筑後市における普通期移植栽培での出穂期と成熟期はともに各々「きぬむすめ」、「にこまる」および「たちはるか」とほぼ同じで、暖地では各々"早"、"やや晩"および"晩"に分類される。その他の稈長、穂長、穂数、玄4.米重、いもち病抵抗性等の特性は、「きぬむすめ」、「にこまる」および「たちはるか」とほぼ同じである(表1)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.「きぬむすめ環1号」、「にこまる環1号」および「たちはるか環1号」が利用されることにより、Cdの基準超過米の発生防止および食品由来のCd摂取量の低減が期待される。 2.各々の品種の栽培適地は反復親品種と同じ関東以西である。「きぬむすめ環1号」および「にこまる環1号」は、いもち耐病性が十分ではなく、縞葉枯病に罹病性であるため、常発地での栽培は避ける。「たちはるか環1号」は、白葉枯病に弱いため、常発地での栽培は避ける。 3.各々の品種は、マンガンの吸収も抑制されるため、特に砂質等の地力の低い圃場ではごま葉枯病の発生に注意を要する。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/karc/2020/karc20_s06.html |
カテゴリ | いもち病 ごま 縞葉枯病 水稲 多収米 抵抗性 品種 良食味 |