タイトル | ニホンナシ果皮色に関連するDNAマーカー |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 | 2014~2020 |
研究担当者 |
竹内由季恵 西尾聡悟 寺上伸吾 髙田教臣 加藤秀憲 齋藤寿広 |
発行年度 | 2020 |
要約 | ナシ93品種・系統と7交雑実生集団を用いて果皮色に関連する領域を解析すると、複数のハプロタイプに分類される。在来品種およびその後代の果皮色形質とハプロタイプの関係を整理して開発したDNAマーカーにより、幼苗期における果皮色についての効率的な選抜が可能となる。 |
キーワード | ニホンナシ、サビ、コルク層、DNAマーカー選抜、ハプロタイプ |
背景・ねらい | ニホンナシの果皮色は果実の外観を決める主要因の1つであり、果皮表面に形成されるサビ(コルク層)の面積割合により赤ナシ・中間・青ナシに分類される。一般には「豊水」、「あきづき」等の赤ナシが消費者に好まれるが、西日本の一部の地域では「二十世紀」等の青ナシが好まれる。これまでの遺伝解析から、赤ナシ形質は顕性遺伝し、関連する遺伝子座は第8染色体に存在することが明らかになっている。果皮色の評価・選抜には結実まで圃場で実生を育成する必要があるためコストと時間を要するが、この評価・選抜を効率化できるニホンナシ品種において網羅的に利用可能なDNAマーカーは開発されていない。 そこで、本研究では既報の第8染色体上のニホンナシ果皮色に関連するSingle nucleotide polymorphism(SNP、Minamikawa et al. 2018)周辺領域においてハプロタイプを推定し、選抜に有効なDNAマーカーの開発を行い、幼苗期における果皮色の効率的な選抜を可能にする。 |
成果の内容・特徴 | 1.果皮色の形質評価は1樹につき3果を2年間行い、果面のサビの発生割合が100%の果実をスコア5(赤ナシ:「豊水」、「あきづき」等)、95%~99%をスコア4(中間:「幸水」等)、75%~0%がスコア3~1(青ナシ:「二十世紀」等)にそれぞれ分類される(図1)。 2.第8染色体上のニホンナシ果皮色に関連するSNP(scaffold49.2_289494)周辺の遺伝領域に5個の新規Single Sequence Repeat(SSR)マーカー(Psc09、Psc25、Psc07、Psc34、Psc03)を設計し、既存の8個のSSRマーカーに加えてハプロタイプ解析に供試している。 3.ナシ93品種・系統についてSNP周辺の上記13個のSSRマーカーを用いて遺伝子型を決定する。ハプロタイプ解析により、新規に設計した2つのSSR マーカー(Psc07とPsc03)に挟まれた約50kbpの領域が8つのハプロタイプ(HAP1~HAP8)に分類される(表1)。ハプロタイプと果皮色を比較すると、HAP1~HAP3、HAP7は果皮全面にサビを発生させる顕性の赤ナシ型、HAP4~HAP6、HAP8はサビを発生させる効果が無いまたは抑制する青ナシ型である。(表1)。 4.7実生集団を用いてハプロタイプと果皮色を比較すると、HAP1は後代がほとんど赤ナシとなる完全顕性(図2a、2b、2c)で、HAP2とHAP3は集団によって後代での赤ナシの出現率が変動する(図2d、2e、2f)。また、青ナシ型には組合せによる果皮色の違いはみられない(図2g)。 |
成果の活用面・留意点 | 1.新規開発したDNAマーカーPsc07はDNAシーケンサーによるフラグメント解析によりHAP1~HAP8を完全に識別可能であるため、果皮色を選抜するDNAマーカーとして利用できる。 2.供試品種以外の品種やその後代集団について開発したDNAマーカーの有効性を検証する必要がある。 3.HAP2、HAP3は後代集団に赤ナシを出現させる効果はあるが、その出現率は集団によって異なり、他の遺伝・環境的な要因の影響受けている可能性がある。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nifts/2020/nifts20_s07.html |
カテゴリ | コスト DNAマーカー 日本なし 品種 |