タイトル | BSR2高発現により4種の重要病害に抵抗性を示すトマト |
---|---|
担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門 |
研究期間 | 2007~2020 |
研究担当者 |
森昌樹 前田哲 横谷尚樹 小田賢司 |
発行年度 | 2020 |
要約 | イネの病害抵抗性遺伝子BSR2を遺伝子組換えによって導入し、高発現させることにより、4種の重要病害(灰色かび病、苗立枯病、青枯病、斑葉細菌病)に抵抗性を示すトマトを作出できる。 |
キーワード | トマト、病害抵抗性、BSR2、灰色かび病、青枯病 |
背景・ねらい | トマトは世界でも生産が多く、国内では最も産出額の大きい野菜である。しかしながら、灰色かび病をはじめ、多くの病害による生産量減が国内外で問題になっている。これまでにイネのBSR2遺伝子が紋枯病等の病害に対する抵抗性において重要であること、花や種子のサイズにも関与することが明らかになっている(2019年度研究成果情報)。そこで、本研究ではこの遺伝子をトマトに導入し、高発現させることにより、種々の重要病害に対し抵抗性を付与できるかどうか明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1.イネのBSR2(Broad-Spectrum Resistance2)遺伝子をナス科作物であるトマトの品種「マイクロトム」に導入し、高発現させることにより、2種類の糸状菌病(灰色かび病及び苗立枯病)に抵抗性を付与できる(図1,2)。 2.上記のBSR2高発現トマトは2種類の細菌病(青枯病及び斑葉細菌病)に対しても抵抗性を示す(図3,4)。 3.上記のトマトは、原品種と比べて花や種子のサイズ、植物体や果実の外観については、大きな違いは認められない。 4.アブラナ科のシロイヌナズナでBSR2を高発現させても、苗立枯病、灰色かび病、青枯病等に対し抵抗性を示す。 |
成果の活用面・留意点 | 1.灰色かび病や青枯病は多くの作物で問題になっているが、BSR2遺伝子を高発現させることにより、ナス科のトマト、アブラナ科のシロイヌナズナの両方で抵抗性を付与できるため、この性質は多くの作物に適用可能と考えられる。特に、観賞用の花きで最も有望と期待される。 2.BSR2遺伝子は、代謝酵素であるシトクロームP450タンパク質の一種をコードしているので、何らかの低分子化合物の生産に関与し、その化合物が上記の性質をもたらすことが予想される。よって、この化合物を同定できれば、薬剤により上記の病害抵抗性を付与することも可能になると考えられる。 3.BSR2遺伝子をシロイヌナズナやイネで高発現させた場合は花の大型化等も認められるが、今回のトマトでは認められていない。本研究に用いた品種「マイクロトム」は植物ホルモンのブラシノステロイドの生合成系が欠損していることが知られているので、その影響によるものではないかと推察される。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s03.html |
カテゴリ | 青枯れ病 あぶらな 立枯病 抵抗性 トマト なす 病害抵抗性 品種 薬剤 |