新規チョウ目昆虫培養細胞7種の樹立とその配布

タイトル 新規チョウ目昆虫培養細胞7種の樹立とその配布
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 生物機能利用研究部門
研究期間 2010~2020
研究担当者 粥川琢巳
秋月岳
立石剣
渡邊和代
発行年度 2020
要約 チョウ目昆虫7種から新たに樹立した培養細胞は、遺伝子機能解析、薬剤開発等に利用することができる。本細胞は、農業生物資源ジーンバンクに登録されているため、配布申請によって国内の試験研究機関で利用できる。
キーワード 昆虫、培養細胞樹立、チョウ目、外来遺伝子導入、農業生物資源ジーンバンク
背景・ねらい 病害虫防除所から発表される警報・注意報の約7割はチョウ目昆虫であるため、これらの種の防除は農業生産上重大な課題である。一方で農薬開発現場では、これまで昆虫個体を使った薬剤試験が通例であったが、より安価で効率的なハイスループットスクリーニング系の構築が可能な培養細胞が近年着目されている。農薬の作用点を明らかにするためには、遺伝子やタンパク質の機能解析、昆虫ウイルス研究等に幅広く利用することのできる培養細胞が個体に比べて有利である。さらに、類似種に対する感受性の違いを検定するためには、近縁種を複数使用することが必要であることから、複数種のチョウ目害虫培養細胞を樹立する。樹立された細胞株は農業生物資源ジーンバンクに登録し、国内の研究機関に配布できる体制を整える。
成果の内容・特徴 1.チョウ目昆虫7種の脂肪体組織を用いて樹立した培養細胞である(表1、図1)。
2.NARO-Cehy細胞(オオスカシバ)、NARO-Lydi細胞(マイマイガ)、NARO-Haba細胞(オオワタノメイガ)、NARO-Hycu細胞(アメリカシロヒトリ)は、街路樹などに被害を与える樹木害虫由来細胞であり、NARO-Cyku細胞はクリの実を食害するクリミガ由来、NARO-Thol細胞はサトイモなどの害虫であるセスジスズメ由来の培養細胞である。
3.NARO-Cehy、NARO-Cyku、NARO-Haba、NARO-Tholでは外来遺伝子の導入が容易にできる。(図2)。
4.NARO-Cehy細胞、NARO-Lydi細胞、NARO-Haba細胞、NARO-Hycu細胞、NARO-Cyku細胞、NARO-Thol細胞の6種の細胞株は市販培地であるGrace's Insect medium (supplemented) に 10%FBSを加えた培地に順化しているため、培養が容易である。7種の細胞は、25°C条件下で週に一回継代することで維持できる。
成果の活用面・留意点 1.本研究において樹立した培養細胞株は、個体レベルでは困難である遺伝子機能解析等の昆虫を対象とする研究における基礎的なリソースとなる。
2.これらの培養細胞株は、標的遺伝子の探索やスクリーニング系の構築等の薬剤開発のためのツールとしての利用が期待される。
3.培養細胞株は、農業生物資源ジーンバンクに登録され、配布可能な状態となっている。ジーンバンクの配布窓口(https://www.gene.affrc.go.jp/)を通じて配布申請することで入手可能である。
図表1 244747-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/4th_laboratory/nias/2020/nias20_s01.html
カテゴリ 害虫 くり さといも 農薬 病害虫防除 防除 薬剤 薬剤開発 わた

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