タイトル | 筋内脂肪交雑形成過程において脂肪細胞由来エクソソームは骨格筋細胞分化マーカーの発現を抑制する |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 畜産研究部門 |
研究期間 | 2016~2021 |
研究担当者 |
尾嶋孝一 室谷進 和田広夢 小川広太郎 大江美香 滝本浩一 西邑隆徳 |
発行年度 | 2021 |
要約 | マウス脂肪細胞が分泌するエクソソームを骨格筋細胞が取り込むことを通じて、脂肪細胞が間接的に骨格筋細胞での筋分化マ-カー遺伝子の発現を低下させる。 |
キーワード | 骨格筋細胞、脂肪細胞、エクソソーム、miRNA、筋内脂肪交雑 |
背景・ねらい | 食肉品質の特徴の1つである脂肪交雑(霜降り)は、骨格筋組織内で脂肪細胞数が増加し、骨格筋線維(細胞)の数が減少することで生じる。そのため、骨格筋という同一組織内に共存する骨格筋細胞と脂肪細胞のやり取り(コミュニケーション)により脂肪交雑の割合が決まると考えられる。しかし、骨格筋細胞および脂肪細胞がどのような仕組みでやり取りを行っているのかは明らかになっていない。一方、エクソソームは細胞が分泌する小胞であり、分泌する細胞由来のタンパク質およびRNA等を含んでいる。エクソソームを取り込んだ細胞ではエクソソームに含まれる成分により生理的変化を引き起こすため、エクソソームは離れた細胞に情報を伝達するための役割を担うと考えられている。そこで、骨格筋細胞-脂肪細胞間での相互作用を明らかにするために、脂肪細胞株であるマウス3T3-L1細胞が脂肪分化から成熟の段階においてコミュニケーションツールとして分泌するエクソソームに着目し、脂肪細胞がエクソソームの受け手となる骨格筋細胞におよぼす影響を明らかにする。 |
成果の内容・特徴 | 1. マウス脂肪細胞株である3T3-L1細胞を脂肪細胞へ分化させた後、培養液中に分泌されたエクソソームを経時的に回収する。蛍光標識したエクソソームをマウス(C57Bl6)骨格筋由来の骨格筋細胞の培養液に添加すると、骨格筋細胞がエクソソームを取り込む(図1)。 2. 分化0日目(D0)由来のエクソソームを添加した骨格筋細胞では4つの筋分化マスターレギュレーター遺伝子のうちMyogおよびMyf6の発現低下、分化12日目(D12)由来エクソソームを添加した骨格筋細胞ではMyf6の発現低下をもたらす(図2)。脂肪細胞はエクソソームを介して骨格筋細胞の分化を抑制する方向に調節している可能性がある。 3. 脂肪細胞が分泌するエクソソームには脂肪細胞分化~成熟段階に応じた種類および量のmiRNAが含まれている(図3)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 骨格筋内脂肪交雑の形成過程を骨格筋細胞と脂肪細胞の相互作用の側面から研究する上で基礎的知見として活用可能である。 2. 脂肪細胞由来のエクソソームには骨格筋細胞分化を抑制する作用があるが、エクソソーム内に含まれるmiRNAの筋分化抑制への関与を調べる必要がある。 3. モデル動物としてマウス由来の培養細胞を使った試験であるため、家畜骨格筋内脂肪交雑過程においても骨格筋細胞と脂肪細胞で同様の作用があることを精査する必要がある。 |
図表1 | ![]() |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nilgs/2021/nilgs21_s11.html |
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