タイトル | ニホンナシ育種における黒斑病抵抗性実生の選抜を効率化するDNAマーカーセット |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 | 2010~2021 |
研究担当者 |
寺上伸吾 足立嘉彦 竹内由季恵 髙田教臣 西尾聡悟 齋藤寿広 山本俊哉 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 黒斑病感受性と連鎖する2種類のDNAマーカーは、ニホンナシ黒斑病感受性品種に特異的なバンドを増幅できる。本マーカーセットにより検出される特異的なバンドを利用することで、幅広いニホンナシ間の交配における、黒斑病感受性実生の効率的な淘汰と、抵抗性実生の選抜が可能となる。 |
キーワード | ニホンナシ、ニホンナシ黒斑病、マーカー選抜育種、病害抵抗性 |
背景・ねらい | ニホンナシ黒斑病は、糸状菌Alternaria alternata (Fries) Keisslerによって引き起こされる、ニホンナシ栽培における主要病害の一つである。「おさ二十世紀」や「南水」などに代表される感受性品種では、防除のために薬剤散布や袋がけが必須であるため、コストや労力がかかる。一方、黒斑病に抵抗性の品種は、コストや労力の低減に加え、環境負荷の低減や、消費者への安心で安全な果実提供に貢献するため、効率的な抵抗性品種の育成が望まれている。 本研究では、ニホンナシにおけるDNAマーカー選抜育種を効率化するために、165品種のニホンナシ遺伝資源を用いた網羅的な接種試験を行うとともに、これら遺伝資源に黒斑病感受性と連鎖するDNAマーカーを適用して、DNAマーカー選抜に適したマーカーセットを選定する。 |
成果の内容・特徴 | 1. 「豊水」×「巾着」のF1集団(1061個体)のファインマッピングから「巾着」の第11番染色体の連鎖地図を構築した。この連鎖地図上には、リンゴ「Golden Delicious」の第11番染色体公開ゲノム配列から開発した、ニホンナシ黒斑病感受性に連鎖するsimple sequence repeat(SSR)マーカー、Mdo.chr11.27およびMdo.chr11.34(2015年研究成果情報:ニホンナシ黒斑病感受性に連鎖するDNAマーカー)が座乗する。黒斑病感受性遺伝子からの距離はそれぞれ、0.4および0.8 cMである(図1)。 2. 糸状菌胞子懸濁液の接種による評価では、ニホンナシ遺伝資源165品種の黒斑病に対する表現型は、39品種が感受性、残りの126品種が抵抗性である。 3. Mdo.chr11.27の220 bpのバンドは、供試した39の黒斑病感受性品種中、38品種において検出され、Mdo.chr11.34の259 bpのバンドは、全ての黒斑病感受性品種において検出される(図2)。抵抗性品種では、それぞれのバンドの増幅は認められない。そのため、これら2種類のマーカーを利用することで、黒斑病抵抗性実生の選抜が可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1. アガロースゲルやポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動法では、長さの差がわずかな増幅バンドを誤って判定する可能性がある。Mdo.chr11.27およびMdo.chr11.34による遺伝子型の解析および判定にあたっては、キャピラリー電気泳動法を用いたDNAフラグメント解析もしくは、次世代シーケンサーを用いたアンプリコンシーケンス解析を行うことが望ましい。 2. 「独逸」、「巾着」および「二十世紀」を祖先に持つ感受性品種・系統を交配親とする場合は、Mdo.chr11.27の220 bpもしくはMdo.chr11.34の259 bpの増幅産物が検出された後代実生は、黒斑病感受性として淘汰できることが明らかになっている。その他の感受性品種においては、後代の感受性実生が特異的バンドを持つことを予備的に確認する必要がある。 3. ガンマ線照射により誘発・選抜された黒斑病耐病性突然変異体「ゴールド二十世紀」、「おさゴールド」および「寿新水」については、本DNAマーカーの遺伝子型は原品種と同一である。 4. Mdo.chr11.27とMdo.chr11.34の両方で組換えが起こる確率(二重乗換え)は、単一の連鎖マーカーと標的遺伝子座の組換え頻度よりも非常に低くなる。そのため、標的遺伝子座を挟み込むように座乗する2種類のマーカーセットを使用することで、より信頼性の高いマーカー選抜が可能である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nifts/2021/nifts21_s07.html |
カテゴリ | 育種 遺伝資源 コスト DNAマーカー 抵抗性 抵抗性品種 病害抵抗性 品種 防除 薬剤 りんご |