ブドウの果皮色を制御するMYB遺伝子型を簡便に検出するDNAマーカー選抜システム

タイトル ブドウの果皮色を制御するMYB遺伝子型を簡便に検出するDNAマーカー選抜システム
担当機関 (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門
研究期間 2015~2021
研究担当者 東暁史
河野淳
佐藤明彦
発行年度 2021
要約 ブドウ果皮色のDNAマーカー選抜システムにより、果皮色を遺伝的に制御する多様なMYB遺伝子型を簡便に検出できる。この手法を適用した約600個体のブドウ遺伝資源のMYB遺伝子型情報は、温暖化に対応した優良着色個体の早期選抜や交配組合せの検討に利活用できる。
キーワード 育種、遺伝子型、果皮色、DNAマーカー、ブドウ
背景・ねらい 生食・醸造用ブドウにおいて、果実成熟期の高温等により生じる果皮の着色不良が世界的な問題となっており、高温下でも安定着色する新品種開発へのニーズが高まっている。これまでに、果皮色の遺伝的な決定要因は、着色遺伝子座に存在するMYBアレルの組合せ(MYB遺伝子型)であることが知られている。MYBアレルのうち、アレルAには着色機能が無いのに対し、E1、E2、C-Rs、C-N等には着色機能があり、E2やC-Nの着色機能はE1やC-Rsよりも高いことが分かっている。しかし、これらの遺伝子型を簡便に検出する方法は未開発である。そこで、ブドウの優良着色品種の早期育成に向け、様々なMYB遺伝子型を簡便に検出可能なDNAマーカー選抜システムを開発する。さらに、ブドウ遺伝資源におけるMYB遺伝子型の多様性を明らかにする。
成果の内容・特徴 1. 本システムはDNA抽出が不要で、1回のPCRで様々なMYB遺伝子型を決定できる。手順は以下の通りである(図1)。①ブドウ幼葉の切片(約1cm2)を採取する。②爪楊枝で葉片を約20回刺突する。③刺突後の爪楊枝の先端を、DNAの溶解・保存の標準的なバッファーであるTris-EDTAバッファー(TE)20μLに混合する。④混合液を75°Cで10分間加熱後、4°Cに冷却し、0.5μLを鋳型としてPCRに供する。⑤得られたPCR産物について、DNAシーケンサーによるフラグメント解析を行う。⑥検出されたフラグメントのサイズからMYB遺伝子型を決定する。
2. 本システムにおけるPCR反応では、既知のMYBアレルのDNA配列に基づくプライマー3種類を使用する(データ略)。着色機能のないアレルAの配列に基づくフォワードプライマー、および機能のあるE1、E2、C-Rs、C-Nアレル等の配列に基づくフォワードプライマーはそれぞれ蛍光標識し、これらのアレルの共通配列に基づくリバースプライマー(非標識)とともに、マルチプレックス反応を行う。
3. 果皮が黄緑色の個体からは、着色機能のないアレルA(181bp)のみが検出される(図2)。着色個体(赤~黒色)からは、機能のあるE1(403bp)、E2(380bp)、C-Rs(247bp)、C-N(247bpかつ290bp)等が検出される。黒色の安定着色が期待できるアントシアニン高含有個体では、E1/E2等、機能のあるアレルをホモで持つ傾向がある。
4. 本システムを活用して、ブドウ遺伝資源(約600個体)の果皮色とMYB遺伝子型との関係を調査すると、黄緑色品種の約85%のMYB遺伝子型がA/Aである(表1)。一方、赤色や紫赤色品種ではC-Rs、B、E1等、着色機能の低いアレルを含む傾向がある。黒色品種では、機能のあるアレルをホモで持つ遺伝子型が約26%と最も多く、C-N、E2 等、着色機能が高いアレルを含む傾向もある。
成果の活用面・留意点 1. 本システムと約600個体の遺伝資源のMYB遺伝子型の情報は、温暖化に対応した優良着色個体の早期選抜や交配組合せの検討に利活用できる。
2. 本システムは増幅サイズが小さいSSRマーカー等を用いれば、他の形質の選抜にも利用できる。
3. シーケンサーによるフラグメント検出の代替として、電気泳動による検出が可能である。しかし、検出感度はシーケンサーよりも低く、明確に判別できるMYB遺伝子型の種類も少なくなる。
4. 本システムで使用する3種類のプライマーにより、既知のMYBアレルの全てを検出できるわけではない。また、未知のMYBアレルが存在する可能性がある。
図表1 249055-1.png
研究内容 https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nifts/2021/nifts21_s04.html
カテゴリ 育種 遺伝資源 新品種 DNAマーカー 品種 ぶどう

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