タイトル | ニホンナシの交雑育種における重要形質に関連したDNAマーカー情報の整理 |
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担当機関 | (国)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹茶業研究部門 |
研究期間 | 2019~2021 |
研究担当者 |
西尾聡悟 寺上伸吾 竹内由季恵 松本辰也 髙田教臣 |
発行年度 | 2021 |
要約 | 主要なニホンナシ59品種・系統におけるニホンナシの重要な育種形質(黒星病抵抗性、自家和合性、早生性、果皮色、黒斑病抵抗性)の遺伝子型および表現型情報を利用することで、ニホンナシ品種育成を加速化することができる。 |
キーワード | DNAマーカー選抜、S遺伝子型、交雑組み合わせ |
背景・ねらい | ニホンナシ育種は農研機構をはじめ、都道府県試験場や大学等全国20場所以上で行われている。農研機構で育成した「幸水」「豊水」「あきづき」が全国のニホンナシ栽培面積の7割を占めているが、栃木県の「にっこり」、長野県の「南水」等の県オリジナル品種もブランド化に成功し普及が進んでいる。2019年にニホンナシ育種について都道府県試験場にアンケートを実施したところ、最も重要視している形質は黒星病抵抗性であり、生理障害の発生の少なさ、収量性、早生性、高糖度、自家和合性が続いた(図1)。黒星病抵抗性、自家和合性、早生性、果皮色、黒斑病抵抗性についてはこれまでにDNAマーカーが開発されており育種利用が可能となっているが、ニホンナシの育種場所での利用は限られている。その理由としては、開発されたマーカーは論文等で公表されているものの、主要品種での遺伝子型情報が整理されておらず、マーカーがどの品種・材料で育種利用できるかわかりづらいことが挙げられる。本研究では、ニホンナシ重要形質の遺伝子型および表現型情報を整理し、国公立研究機関のニホンナシ育種においてDNAマーカーの利用を促進することで効率的にニホンナシの品種育成を加速することを目的とする。 |
成果の内容・特徴 | 1. 本データベースは、主要なニホンナシ59品種・系統の黒星病抵抗性、自家和合性、早生性、果皮色、黒斑病抵抗性の遺伝子型および表現型によって構成される(表1)。これらのデータベースの品種を育種利用する際に、いずれの形質で、どのDNAマーカーが利用可能であるか容易に判断することができる。 2. ニホンナシの自家不和合性を決定するS遺伝子型について、自家和合性変異型のS4sm遺伝子を持っていても、 もう1対のS遺伝子の組み合わせによっては自家和合性とならないことが知られている。S遺伝子型を総当りで交配させた際に後代実生に含まれる自家和合性個体の割合を求めることができる(表2)。表2を利用することで容易に自家和合性個体獲得のための交雑組み合わせを考案することができる。 |
成果の活用面・留意点 | 1. データベースは国公立研究機関のニホンナシ育種におけるDNAマーカー選抜や交配計画に利用可能である。 2. 自家和合性、早生性のマーカーは原因遺伝子の塩基配列を利用して設計されている遺伝子マーカーであるが、黒星病抵抗性、黒斑病抵抗性、果皮色は原因遺伝子に連鎖するマーカーであるため、マーカー遺伝子座と原因遺伝子間の組み換えにより誤判定の可能性がある。この場合、原因遺伝子の両側に位置する連鎖マーカーを用いることで、精度が高い検定が可能である。 |
図表1 | |
研究内容 | https://www.naro.go.jp/project/results/5th_laboratory/nifts/2021/nifts21_s03.html |
カテゴリ | 育種 黒星病 生理障害 データベース DNAマーカー 抵抗性 日本なし 品種 もも |