課題名 | j.家畜生産性向上のための育種技術及び家畜増殖技術の開発 |
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課題番号 | 2009013859 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構,畜草研,家畜育種増殖研究チーム |
協力分担関係 |
帯広畜大 名古屋大学 |
研究期間 | 2006-2010 |
年度 | 2009 |
摘要 | 1)遺伝子解析により得られる遺伝子情報を家畜の育種に活用するため、肉牛では、黒毛和種半きょうだい家系のQTL解析から増体形質QTLの候補遺伝子の1つと推定されたグレリン受容体遺伝子(全長約6.3kb)について、53ヶ所の塩基多型を明らかにし、その中から和牛の産肉形質の解析に有用な5種類の塩基多型を提案した。このうちグレリン受容体遺伝子5'UTR-マイクロサテライト座位は、検定開始体重、検定終了時体重、枝肉重量、平均1日増体重等の増体形質と最も有意な関連性を示し、和牛の増体形質の育種に有効なDNAマーカーとして活用できることを明らかにした。 鶏では、卵殻形質関連遺伝子として卵殻強度に関与するQTL及び候補遺伝子(オボカリキシン32)を見出した。さらに育種への応用を目指して遺伝子マーカーの検討を行い、オボカリキシン32遺伝子について3つのハプロタイプを同定し、そこから生ずる6つのジェノタイプの識別手法を確立した。 みつばちでは、腐蛆病抵抗性のみつばち作出を目指し、腐蛆病に強いニホンミツバチの自然免疫関連遺伝子の配列を調査しており、新たに遺伝子の発現制御に関わる遺伝子の1つであるToll遺伝子を単離し塩基配列を明らかにしたが、セイヨウミツバチと大きな差はなく、抗病性の違いはその他の発現制御遺伝子による可能性が高いことが示された。また、ニホンミツバチの腸内菌叢から単離した35コロニーの腸内細菌のうち7つが抗腐蛆病菌活性を示し腐蛆病抵抗性との関連を明らかにした。2)家畜、家きんのデータ解析法の改善に関しては、従来の1つのQTL効果を考慮したモデルではなく、2つのQTLの効果を考慮したモデル(2QTL モデル)を作出し、このモデルがQTL解析に有効でかつ3~6%正確度を上げられることを明らかにした。制限付き選抜のための遺伝的能力評価法については、形質の特性、集団の大きさ、選抜の有無、反復記録数等が遺伝的パラメータの推定精度に与える影響を明らかにし評価法の改良を行った。 健全性や生産能力の向上については評価手法の開発を行い、雌の長命性の指標として、農家で淘汰されるリスクを表す在群能力(農家で飼われている期間)を評価するための予測モデルとして、変量回帰アニマルモデルが遺伝率は0.1程度と低いものの評価できることを明らかにした。また、豚の離乳頭数の改良に向けては、子豚の生存率を改良形質とした場合、初期発育に加え出生時における同腹内の子豚体重のばらつきが小さい方が生存率が高く、これらの形質が生存率の改良に有用な評価形質であることを明らかにした。3)生殖細胞や培養細胞を利用した鶏における新たな育種素材開発に向け、in vivoでの始原生殖細胞への遺伝子導入方法を検討し、2.5日胚の血管中へレンチウイルスベクターを注入することにより始原生殖細胞への遺伝子導入を可能にした。しかし、緑色蛍光たんぱく質遺伝子を導入した雄個体からは、導入遺伝子を保持する後代は得られていない。一方、鶏に異種抗原遺伝子を導入した鶏の後代から導入遺伝子を保持する個体が得られ、遺伝子導入鶏を作出できた。 4)牛の効率的な増殖技術の開発に向けて、良質な受精卵の生育に適した培養条件を検討し、生育時に産生される核酸の代謝産物であるプリン体のうちアデニンは1細胞期からの添加で胚の発生率を低下させ、また8細胞期からの添加ではアデニンはヒポキサンチンよりも低濃度で発生を抑制するなど胚発生に悪い影響を及ぼすこと、プリン体の種類及び発生ステージによりその影響が異なることを明らかにした。また、遺伝子発現を利用した牛の早期妊娠診断技術を開発するため、妊娠初期の末梢白血球で発現の増加する遺伝子群を把握し、その中から非妊娠牛群に比べ妊娠牛群で発現が高く、妊娠診断へ応用できる可能性のある遺伝子を見出した。 |
カテゴリ | 育種 診断技術 DNAマーカー 抵抗性 鶏 肉牛 評価法 豚 ミツバチ |