(1)農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発

課題名 (1)農業環境中における有害化学物質のリスク評価手法及びリスク管理技術の開発
課題番号 2009014005
研究機関名 農業環境技術研究所
研究分担 (独)農業環境技術研究所,有機化学物質研究領域
協力分担関係 国立環境研究所
水資源公社(韓国)
東京シンコール(株)
東京都環境科学研究所
山形県農業総合研究センター
新潟県農業総合研究所
福岡県農業総合試験場
秋田県農林水産技術センター
三菱化学(株)
興和総合科学研究所
研究期間 2006-2010
年度 2009
摘要 ア 農薬等の環境リスク評価手法及びリスク低減技術の開発1)有機化学物質のリスク低減技術の開発 50%メタノール・水による土壌抽出法(平成20年度普及に移しうる成果)について、土性の異なるディルドリン残留5ほ場(灰色低地土、褐色森林土、黒ボク土)で栽培した4品種のキュウリで妥当性を検証したところ、土壌抽出濃度と果実中濃度との間に品種毎で高い相関が得られ、その有用性を実証するとともに、品種・作型・着果節位の違いによる濃度の変動幅を明らかにした。 ディルドリンを好気的に分解する糸状菌を、殺虫剤エンドスルファン(POPsの1種であるディルドリンと類似の構造を持つ化合物)を連用したさつまいも畑土壌から単離した。この菌は、Mucor racemosus の近縁種であった。ディルドリンを添加した模擬汚染土壌に、この菌を混和すると、培養7 日間で土壌中のディルドリンは検出限界以下まで減少するなど、農耕地のバイオレメディエーションへの応用が期待される。 また、研究シーズが発展し、水浄化を目的とした微粉末活性炭タブレットが開発された。2)有機化学物質のリスク評価手法の開発 水稲用殺虫剤およびその分解物の水生動物に対する半数影響濃度を調査し、殺虫によっては分解物の毒性が必ずしも低下しないことを明らかにした。また、水生生物に対する農薬の毒性の生物種毎のバラツキや、農薬の河川水中濃度の地域的なバラツキを解析し、農薬による環境リスクの大きさを計算するための手法を確立した。イ 重金属汚染リスク評価手法及び汚染土壌修復技術の開発1)カドミウム高吸収イネ品種によるカドミウム汚染水田の浄化技術(ファイトレメディエーション) カドミウム高吸収イネを「早期落水法(移植後最高分げつ期まで湛水、以後収穫時まで落水)」で2~3 作栽培することにより、土壌のカドミウム濃度を20~40%低減することに成功した。その後に栽培した食用イネの玄米中のカドミウム濃度は、未処理の隣接圃場に比べて40~50%低減した。また、イネ地上部のうち、最初にもみだけを収穫し、その後天日乾燥した稲わらをロール状にまるめて収穫する「もみ・わら分別収穫法・現地乾燥法」によるカドミウム吸収イネの低コスト処理方法を開発した。本成果は、本研究所が第1期に開発した基本技術を高度化したものであり、安価で広範囲に適用できるカドミウム汚染土壌浄化技術として期待される。また、世界中で研究が行われているファイトレメディエーションの中で最も実用化に近いものと考えられ、国際誌に発表後、プレスリリースし、2009年農林水産研究10大トピックスに選定されている。2)カドミウム、ヒ素の吸収機構の解明 地上部のカドミウム濃度が異なる稲品種間およびナス属植物について、その集積の違いを決定する生理的要因を解析し、導管のカドミウムを輸送する能力に差があることを発見した。また、玄米のカドミウム集積に関わる量的形質遺伝子座(QTL)を、新たに第7 染色体の短腕側に同定した。また、このQTLが銅、鉄、マンガン、亜鉛の必須重金属の玄米集積には関与せず、カドミウム濃度のみを特異的に高めることを明らかにした。これらの成果は、作物のカドミウム蓄積の遺伝・生理学的解明を通じて、新たなリスク低減対策の開発に寄与するものである。 稲の出穂前後に水田を湛水管理することで玄米中のカドミウムを低減する対策が行われているが、このような場合の玄米中ヒ素濃度への影響は明らかではない。そこで、水稲及び土壌中に存在するヒ素を化学形態別に分析し、水管理が水稲中のヒ素・カドミウム濃度に及ぼす影響について解析した。その結果、出穂期の水管理は玄米ヒ素濃度にも大きく影響し、出穂前後3 週間湛水により有機ヒ素(ジメチルアルシン酸)濃度が高くなること、玄米総ヒ素濃度と総カドミウム濃度の間には負の相関があること等を明らかにした。本成果は、カドミウムとヒ素の両方の汚染リスクがある地域の対策を検討する上で重要である。
カテゴリ 病害虫 乾燥 管理技術 きゅうり 水田 低コスト なす 農薬 品種 水管理 輸送

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる