課題名 | ④ 植物の耐虫性と害虫の加害性の分子機構の解明 |
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課題番号 | 2012020465 |
研究機関名 |
農業生物資源研究所 |
研究分担 |
朝岡 潔 谷合 幹代子 中村 匡利 今野 浩太郎 井上 尚 長谷川 毅 田村 泰盛 松本 由記子 小林 徹也 |
協力分担関係 |
国立大学法人名古屋大学 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 国立大学法人九州大学 (株)アースノート 国立大学法人岡山大学 (独)農業環境技術研究所 富山県農林水産総合技術センター 国立大学法人信州大学 国立大学法人東京農工大学 国立大学法人京都大学 |
研究期間 | -4 |
年度 | 2012 |
摘要 | 1.クワ乳液由来の耐虫性タンパク質MLX56の耐虫メカニズムを解明するため、中腸内のキチンで構成される囲食膜といわれる構造体への作用を調べたところ、MLX56を摂食したエリサン幼虫では囲食膜の異常な肥厚が観察された。肥厚した囲食膜にはキチンと大量のMLX56が含まれることやキチン合成阻害剤の同時摂食で耐虫活性がなくなることなどから、MLX56が囲食膜のキチンと結合して耐虫性を発揮すると考えられた。また、MLX56等の遺伝子を植物に一過的に発現させ、昆虫の生存数、体重増加等により耐虫活性を検定する手法を確立した。この手法によりMLX56を一過的に発現させたタバコ、トマト、シロイヌナズナがハスモンヨトウやコナガに有意な耐虫性を示すことが検出できた。 2.鱗翅目昆虫の成虫は花の蜜などを吸汁するものが多いが、地面上の水分を口吻で吸汁する場合がある。昆虫の吸汁成立因子としての味覚の役割を解析するために、アゲハ類成虫を対象にした行動実験を行ったところ、10mM濃度のナトリウム水溶液を好んで吸水した。一方、口吻内の味覚細胞が発するスパイクと呼ばれる電気的応答を記録したところ、塩受容細胞の多くが同濃度の塩化ナトリウム水溶液に対して最も高いスパイク頻度で応答したことから、これらの味覚細胞で受容する情報が吸汁成立の要因となっていると考えられた。 3.トビイロウンカとツマグロヨコバイは、主にイネの師管液を吸汁する重要害虫である。これらの昆虫が吸汁する際には、植物体内に口針を刺して唾液を吐出し、口針の周囲には口針鞘と呼ばれる構造物を形成する。吸汁成立に必要な因子の候補として、トビイロウンカの口針鞘の構成タンパク質及びツマグロヨコバイのα-グルコシダーゼに着目して精製と性状の調査を行ったところ、トビイロウンカの口針鞘構成タンパク質の1つとその遺伝子を特定し、ツマグロヨコバイからは2種類のα-グルコシダーゼを精製した。スクロース(ショ糖)を基質とする2種のα-グルコシダーゼの酵素反応では、分解産物のグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)の他、スクロースにグルコースが付加したメレジトースと思われる生成物が確認された。 4.インド型イネ品種由来のトビイロウンカ抵抗性遺伝子Bph26は、2個の遺伝子候補が予測されたが、cDNAを単離して塩基配列を解析したところ単一遺伝子であることが分かった。この遺伝子は、病害抵抗性遺伝子等と共通のNBS-LRRとよばれる典型的なモチーフ構造を持つタンパク質をコードし、感受性品種では塩基の変異で完全なタンパク質ができない可能性が示唆された。 5.トビイロウンカの抵抗性イネ品種に対する加害性を制御する遺伝的要因を明らかにするため、3種の抵抗性イネ品種とそれらを加害できるウンカの抵抗性系統等の近交系を用いて、加害性の遺伝解析を行った。その結果、単一因子支配と複数の因子が支配すると考えられる遺伝様式を示す組み合わせに分かれた。また、九州大学、九州沖縄農業研究センターと共同でSSRとSNPマーカーを17の連鎖群に位置づけ、イネ害虫で世界初となる遺伝地図を作成して公表した。 |
カテゴリ | 害虫 たばこ 抵抗性 抵抗性遺伝子 トマト 病害抵抗性 品種 |