⑤ 昆虫に関わる生物間相互作用の解明と利用技術の開発

課題名 ⑤ 昆虫に関わる生物間相互作用の解明と利用技術の開発
課題番号 2012020466
研究機関名 農業生物資源研究所
研究分担 霜田 政美
田中 誠二
村路 雅彦
新川 徹
安居 拓恵
前田 太郎
辻井 直
中島 信彦
宮本 和久
三橋 渡
渡部 賢司
和田 早苗
村上 理都子
陰山 大輔
協力分担関係 (独)農業・食品産業技術総合研究機構
総合研究大学院大学
浜松医科大学
沖縄県農業研究センター
石川県農林総合研究センター
光産業創成大学院大学
宮城県農業・園芸総合研究所
神奈川県農業技術センター
地方独立行政法人大阪府立環境農林水産総合研究所
徳島県立農林水産総合技術支援センター
研究期間 -4
年度 2012
摘要 1.チョウ目農業害虫に対する微生物製剤などに使用される殺虫性細菌由来のBt毒素、Cry1AbやCry1Acへの抵抗性を獲得する害虫が出現している。カイコで突き止めた抵抗性の原因遺伝子はABCトランスポーターの一種(ABCC2遺伝子)であり、細胞膜表面に露出している部分へのチロシンの挿入により抵抗性を獲得する。抵抗性カイコ品種の中腸から調製した刷子縁膜小胞(中腸管腔側の膜成分で構成される小胞)は、Cry1Ab毒素と結合した。ABCC2の変異は毒素の中腸膜への結合には影響せず、それ以降の過程で毒素の作用を回避すると示唆された。
2.トビイロウンカが媒介するイネ病原ウイルスの一種、イネグラッシースタントウイルスがコードするタンパク質のうち、分子量5万以下の8種類について酵母ツーハイブリッド法によるトビイロウンカ結合タンパク質のスクリーニングを行った。P1、P2、P3の各非構造タンパク質をベイトにした場合にはアクチン遺伝子を含んだ配列が多数検出され、これらのウイルスタンパク質は細胞質アクチンと相互作用する性質を持つと考えられる。
3.昆虫の共生細菌、ボルバキアは感染により昆虫個体群に様々な性比異常を誘起するため、天敵等有用昆虫の雌雄産み分けなどに利用できる可能性がある。メス化を引き起こすボルバキア(wFEM)はカイコの雄由来の培養細胞(M1)に雌型の遺伝子発現をもたらすが、その作用点は不明である。カイコの性決定関連遺伝子(BmIMP)の発現パターンに対するwFEM感染の影響を調査したところ、感染M1細胞では30日後からBmIMP発現量が低下すると共に、雌雄判別マーカー遺伝子であるBmdsxの発現パターンがオス型からメス型に変化した。BmIMPはオスのみで発現し、Bmdsxの上流に位置するため、wFEMの作用点はBmIMPよりも上流にあると判明した。
4.世界的な重要害虫であるサバクトビバッタは、顕著な相変異現象を示し、大発生すると群生相化して黒化することが知られている。これまで黒化誘導に関わる環境要因として、他個体との接触刺激が重要であり、視覚情報は重要でないと考えられてきた。しかし今回、静止画ではなく動画を利用することで、視覚刺激だけで黒化させることに初めて成功した。容器越し(非接触)にバッタの動画を見せると、見せた数に応じて孤独相幼虫(緑色)の黒化が進んだ。黒化はコオロギやオタマジャクシの動画でも誘導され、黒化を誘導する環境要因は、物体の色や形ではなく、“動き”であることが判明した。
5.害虫の系統間関係の解析では、沖縄県や鹿児島県の奄美群島に生息域を拡大しているサトウキビの害虫カンシャクシコメツキ類について、120集団のミトコンドリアDNA塩基配列(約2.9 kb)を用いて分子系統地理学的解析を行った。その結果、各地域個体群間の系統関係の概要が明らかになるとともに、過去における宮古地方から沖永良部島、石垣・西表地方から与論島への侵入など、移動分散経路が推定された。
6.交信撹乱による防除技術の実用化を目指し、サトウキビの重要害虫ケブカアカチャコガネについて、高濃度の性フェロモン(2-ブタノール;2B)がオスの行動に及ぼす作用を、室内風洞実験により予測した。2Bには光学異性体であるR体(活性本体;R2B)とS体が存在するが、高濃度のR2Bのみならずラセミ2B(R:S=1:1)存在下で、オスのメスモデル(R2B)への定位行動が減少し、安価なラセミ2Bを用いた交信攪乱の有効性が示された。
カテゴリ カイコ 害虫 さとうきび 性フェロモン 抵抗性 品種 防除

こんにちは!お手伝いします。

メッセージを送信する

こんにちは!お手伝いします。

リサちゃんに問い合わせる