課題名 | 環境負荷物質の広域動態モデル策定と生産技術の環境負荷評価法の開発 |
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課題番号 | 2014025560 |
研究機関名 |
農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究分担 |
松森堅治 |
協力分担関係 |
北海道総研 秋田県農試 愛知県農総試 広島県東部農業技術指導所 島根県農業技術センター |
研究期間 | 2011-2015 |
年度 | 2014 |
摘要 | 広域農地の水系における環境負荷物質の低減技術シーズに関しては、 a) イチジク栽培のヤケ果低減に対する拍動灌水装置導入効果について検討し、イチジク圃場の土壌水分を安定に保つことができ、水分ストレスの回避によりヤケ果率が低減することを明らかにした。また、水道水、側溝水、ため池水のいずれも水源として利用可能なことを示した。 b) 傾斜地水田の転換畑アスパラガス栽培では、拍動灌水装置と連動する電磁弁を設置し、水位調整タンクを組み合わせることで、高低差のある圃場に点滴灌水を導入する方法を開発した。 c) 高齢者でも安全、簡易にメンテナンスできるように高所の貯水タンクを必要としない実規模の改良型拍動灌水システムを作成した。本装置をブドウコンテナ栽培に適用して灌水量と水消費量の調査を行い、新梢の伸張に応じた灌水量調節のための制御方法を開発した。 d) 有効態リン酸が約30mg/100gの圃場では、作物吸収量相当のリン酸施肥量とすることで、岡山県露地ナス標準施肥量(40kg/10a)に対して、畝間灌水では約6割、拍動灌水装置では約8割を削減しても9kg/m2相当以上の収量(岡山県の目標収量8kg/m2)が得られることを明らかにした。 e) 拍動灌水装置の優位性を明らかにするため、露地ナス栽培圃場の畝断面における根の分布について、土壌断面(幅80cm×深さ30cm)に2cm×4cmの窓を開けた調査板をあて、窓内に観察された根の本数を目視で計数する栽培現場に適用可能で、観察者の習熟を要さない簡易調査法を開発した。 負荷低減対策技術の導入効果を予測可能な農業由来環境負荷物質の動態モデルに関しては、 a) 鳥取県、岡山県を対象に河川水の全窒素濃度を予測する水質モデルを作成した。説明変数となる土地利用別面積の偏回帰係数の大きさは、平成25年度までの対象地域と同じ傾向(畑>都市>田>山林の順)であり、積雪地を含む中国地方でもモデルが適用できることを確認した。 b) 上記2県の灌漑期と非灌漑期に分けたモデルにより、灌漑期の田の係数が大きく、窒素濃度の低い河川水を灌漑水利用するため、排水の窒素濃度が高くなり河川の濃度を上昇させること明らかにした。 水系における環境負荷リスクに対する脆弱性や対策技術の効果の評価に関しては、 a) 慣行の栽培技術と拍動灌水装置などを新規に導入する地域資源活用技術の富栄養化インパクト(富栄養化の影響をリン酸塩濃度等量に換算したもの)に関するLCA(ライフサイクルアセスメント)の評価の過程が、資材等製造・耕地からの排出・燃料・機械製造・化学肥料製造・有機肥料製造・農薬製造の7過程に分解できることを示した。 b) 牧草地や大規模野菜畑での堆肥、スラリー等の利用では、施用後のアンモニア揮散も加わるため、化学肥料より富栄養化インパクトが増大する場合があることを示した。露地ナス畑への拍動灌水装置の導入により、窒素溶脱量が低減し、富栄養化インパクトが低下することを明らかにした。 c) 水田では無代かきや深水管理の導入によって富栄養化インパクトが負の値となり、富栄養化が抑制されることを示した。八郎潟地域では、耕地からの排出過程の値は懸濁物質の流出抑制や脱窒により負(=浄化)となり、絶対値が他の6過程の合計値(正=汚濁)より大きいことを示した。 |
カテゴリ | 土づくり 肥料 病害虫 アスパラガス いちじく 傾斜地 栽培技術 水田 施肥 なす 農薬 評価法 ぶどう 水管理 |