気候変動下における水稲の高温障害対策技術の開発

課題名 気候変動下における水稲の高温障害対策技術の開発
課題番号 2014025592
研究機関名 農業・食品産業技術総合研究機構
研究分担 森田敏
長田健二
協力分担関係 気象庁地球環境・海洋部
熊本大
群馬県農技セ
新潟農総研
九州大
フクハラファーム
横田農場
ぶった物産
AGL
滋賀県農業技術振 興センター
研究期間 2011-2015
年度 2014
摘要 水稲高温障害の広域解析に関しては、水稲移植期に対して登熟相の高温遭遇確率を用いたリスク分析を行い、高温登熟障害回避のための移植早限の設定法を開発した。さらに、これに平成25年度までに開発した移植晩限推定法を組み合わせ、高温登熟障害、収量性、登熟不良の3点を考慮した移植適期推定法を開発した。
高温障害、収量変動のメカニズムの解明と安定多収栽培技術の開発に関しては、
a) 人工気象室試験の高温寡照区における白未熟粒歩合が、「西海290号」で「ヒノヒカリ」よりも明らかに少なく、「おてんとそだち」、「にこまる」、「西南136号」といったほかの高温耐性品種・系統とは有意差がないことを示した。一方、圃場試験では、ハウス区、対照区いずれでも「西海290号」は「にこまる」よりも乳白粒が少なく、整粒歩合が高いことを明らかにした。
b) 人工気象室試験の玄米における炭水化物代謝、ストレス関連、ABA代謝を中心とした遺伝子発現の解析により、「西海290号」を含む耐性品種で、熱ショックタンパク質(HSPs)の発現が「ヒノヒカリ」よりも高まる傾向を明らかにした。
c) 圃場試験において、「西海290号」では「にこまる」より穂揃期の葉色、葉身窒素含有率、気孔コンダクタンスが高く、出穂後の乾物生産が多く登熟度も高かったことから、登熟期の日中の光合成の維持と群落温度の低さが「西海290号」の圃場での高温耐性に貢献している可能性を見出した。
作物モデルに連動させるための群落気象評価手法等の開発に関しては、
a) 水田の熱環境を改善する、より水消費の少ない管理方法に関しては、水田の熱収支モデルを用いて、平成22年の佐賀県の登熟期を対象として水管理による水温変化と取水量を同時にシミュレーションした結果、日最高気温32℃以上の場合に限って灌漑を実施する方法が、取水量を抑えつつ27℃以下に水温を低下させることができて効果的であることを明らかにした。
b) つくば市谷和原の7月31日に出穂した圃場の水温実測により、最適制御区(8時取水16時落水)では、対照区(16時取水8時落水)よりも登熟期間を通して水温が低くなり、その効果は特に晴天日で著しいことを明らかにした。
c) 近年の温暖化環境下における多収水稲の収量性に関する好適出穂期に関しては、多収品種「北陸193 号」ではm2当たり籾数が収量制限要因となっていることに注目して、地上部窒素吸収量の増加に伴って現れる最大籾数が、出穂28~7日前の日射量との間で有意な相関があることを見出した。さらに、これを基礎に、1kmメッシュ農業気象データから四国地域で籾数が最大になる好適出穂期をマップ化した。
このほか、
a) 半年程度の現地観測を実施することで、中山間地域等の複雑地形地域における詳細な気温評価を可能とする、50mメッシュ気温データ作成技術を開発した。本手法は、兵庫県の山田錦栽培地域4,500haで活用されているほか、和歌山県のミカン栽培地域3,881haでも用いられている。
カテゴリ 気候変動対策 高温対策 高温耐性 高温耐性品種 栽培技術 水田 水稲 多収栽培技術 中山間地域 品種 水管理

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