3-(2)次世代水産業及び他分野技術の水産業への応用のための研究開発

課題名 3-(2)次世代水産業及び他分野技術の水産業への応用のための研究開発
研究機関名 国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産資源研究所
水産資源研究センター生命情報解析部 ゲノム情報解析グループ
水産資源研究センター生命情報解析部 分子機能グループ
水産資源研究センター海洋環境部 寒流第1グループ
寒流第2グループ
水産資源研究センター海洋環境部 暖流第1グループ
水産資源研究センター社会・生態系システム部 漁業管理グループ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 水産技術研究所
環境・応用部門沿岸生態システム部 亜寒帯浅海域グループ
環境・応用部門環境保全部 化学物質グループ
環境・応用部門環境保全部 有害・有毒藻類グループ
環境・応用部門水産工学部 水産基盤グループ
養殖部門育種部 育種基盤グループ
養殖部門シラスウナギ生産部 基盤グループ
養殖部門生理機能部 飼餌料グループ
養殖部門養殖経営・経済室
環境・応用部門水産工学部 漁業生産工学グループ
養殖部門育種部 系統開発グループ
養殖部門生産技術部 技術開発第1グループ
技術開発第3グループ
技術開発第4グループ
国立研究開発法人水産研究・教育機構 開発調査センター
実証化企画室
協力分担関係 福島県
東京大学
東京海洋大学
京都大学
岡山大学
高知大学
宮崎大学
(国研)産業技術総合研究所
(国研)理化学研究所
(公財)海洋生物環境研究所
研究期間 2016-2020
年度 2020
摘要 ・オーミクス情報データベース(水産生物のゲノム情報や遺伝子発現情報等のオーミクス情報を格納したオンライン型データベース)については、これまでに登録したクロマグロ、ブリ、スジアラ、スサビノリの全ゲノム配列に加えて、種判別に使用可能な17種のDNAマーカー(個体に特有のDNA配列)情報を登録してデータベースの拡充を進めた。また、水産研究・教育機構内での運用に向けて、当該機構内の研究開発職員及び教育職員の全員を対象としてログインID及びパスワードの発行により、アクセス可能な状態になった。現在、使用方法やパスワードの入手方法等について周知すべく準備中である。
・育種については、ウナギでは仔魚期間の長さについて、個体の持つ遺伝のしやすさを表す指標となる育種価の予測の高精度化により優良親魚を選抜した。選抜個体間の交配により、仔魚期間が短いことが期待される子孫を作出し、育成中である。
・アコヤガイでは、赤変病病原体数を指標とした選抜技術を開発することにより、赤変病が発生する夏季の生残率が高く、体内の病原体数が少ない系統を作出した。また、測定した核として用いる貝殻真珠層のスペクトル(波長順に並べた光の強度分布)に基づき生産される真珠の干渉色を予測し、CGで真珠の色を可視化する技術を開発した。
・環境診断・修復技術については、遺伝子発現解析(遺伝子発現の強さを定量化する解析方法)により特定した有害赤潮渦鞭毛藻類(カレニア・ミキモトイ)のストレス応答遺伝子を赤潮動態予測マーカー候補とした。また、同じく渦鞭毛藻類の代謝産物解析(メタボローム解析)から、細胞内の特定の代謝産物の挙動が渦鞭毛藻の細胞数と相関があったことからマーカー候補として活用可能であることを明らかにした。さらに、赤潮原因藻類に有効な殺藻細菌の漁場での動態把握による赤潮終息予測技術の開発についても、現場での迅速診断が可能なスーツケースラボ(スーツケース内に赤潮サンプリング用具や試薬、手のひらサイズの次世代型シーケンサー等を収納した携帯式の分析キット)の開発により、その基盤技術を構築した。また、電位差を利用した底質環境健全度をリアルタイムで検出・通報するシステムの開発を完了し、漁場での実証試験を実施した。竹炭を用いた底質改善技術についても、ケーススタディとして漁場において実証を行い、現場の漁業者等から意見等を収集している。
・その他、オーミクス技術を用いた新規魚類用飼料の開発及び有効性評価、環境DNA(環境中から採取される大型生物由来のDNA)解析を活用した各種の技術開発、環境中の複数の単細胞生物種のゲノムを同時に解析するメタゲノム解析による天然ウナギ仔魚の主要餌料の探索、スサビノリあかぐされ病解明及び耐病性系統開発のためのゲノム編集技術による免疫応答の解明等を実施した。
・オーミクス情報データベースについては、登録済みのスジアラ及びスサビノリのゲノム情報を重点研究課題2の水産庁養殖業成長産業化技術開発事業に受け渡しを開始しており、当該事業において高成長系統の作出や漁場での生理状態の評価等に活用されている。クロマグロのゲノム情報は同じく重点研究課題2において農林水産技術会議の委託プロジェクト研究に受け渡しを行い、早期採卵や人工種苗育成等の技術開発に活用中である。また、環境DNA技術を重点研究課題1に受け渡しを進めており、令和3年度から魚卵の迅速種判別に活用する予定である。
・育種については、ウナギの仔魚期間短縮のための知見を重点研究課題2の水産庁のウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの実証事業に受け渡しを進めている。また、アコヤガイの赤変病耐性系統や真珠品質の画像による予測技術は、いずれも県水試等への受け渡しを予定している。
・環境診断・修復技術については、赤潮の動態予測や終息予測技術の開発、電位差を用いた底質環境の健全度のモニタリング技術等を重点研究課題2の漁場環境改善等の課題に受け渡し、令和3年度からの実証試験を予定している。
・ウナギ仔魚の消化管内容物及び餌料である有機物懸濁粒子(POM)のメタゲノム解析結果から、実際の生息海域における環境水中生物相のみを用いて、細菌によるPOMの産生を陸上の閉鎖型循環式水槽において再現することに成功した。さらに、ウナギ仔魚への餌料効果を確認した。
・日本沿岸における急潮、貧栄養化、酸性化については、令和元年度までにそれぞれ将来予測像の作成を完了している。
・加えて令和2年度には海洋生物への酸性化の影響評価のため、キタムラサキウニ幼生の酸性化環境への順化・適応についての飼育実験結果から、CO2濃度が2000μatmで影響が現れる可能性が示唆された。
・酸性化と貧酸素化の複合影響の総合評価については、日本沿岸のpH及び溶存酸素のモニタリングによる現在の沿岸環境の複合リスク評価を進めているほか、水産関係団体による沿岸pHモニタリングへの技術支援も実施した。
・水産研究・教育機構漁業調査船蒼鷹丸、若鷹丸により観測を実施した海洋表層CO2分圧に関するデータを国際観測データベース(SOCAT)に登録するとともに、令和元年度における海洋全体のCO2吸収量を国際共同で推定し論文として公表した。
・底びき漁業への気候変動の影響については、底魚の魚種ごとの資源量の指標(CPUE:単位努力量あたり漁獲量)の重心緯度の経年変化を漁業及び水温も含めて解析した結果、一部の底魚類は経年的な分布の北上が検出され、この傾向は東北太平洋側だけではなく日本海側でも同様であった。
・既に確立した底水温分布図及び魚種別、位置別に漁獲量やCPUEを集計するプログラムを用いて魚種ごとの分布特性を解析した結果、アカガレイでは分布水深と底水温に相関が見られ、底水温が低い年は沿岸寄りに分布することが明らかになった。
・ワムシにおいては種培養を中心とした動画マニュアル、タイラギにおいては幼生飼育を中心として技術マニュアルを完成させ、関係機関等に紹介するとともに、実用的なマニュアルとなるよう改良を行った。
・漁船や調査船の船長の衝突回避操船技術について、航海シミュレータを用いてデジタル化解析を行い、AI操船と比較してそれぞれの特徴評価を行った。
・「匠の技」のデジタルアーカイブ化に際しては、動画だけではなく匠の音声解説や周辺音、匠の精神的プレッシャー等も記録として重要視した。データ管理と供用について、テキストと動画データのリンクが有効であることを明らかにした。
・水産業における労働環境条件と要求所得との関連性について解析を行った結果、所得以外で回答者が最も望ましい条件(所得は除く)下での要求所得は340万円、回答者が最も望ましくない条件下での要求所得は1,909万円であることが明らかとなり、所得が見合えば漁業・養殖業に就業しても良いと答えた人が95%となった。今回の結果は、労働環境条件と要求所得との関連性を科学的に裏付けた成果である。高齢者や女性が参加する漁港内でのトリガイ養殖の事例研究においては、効率化や規模拡大により所得率が向上することが試算された。
・6次産業化については、未利用・低利用資源を利用・流通させる取り組みが多くなされている。未利用・低利用な魚介類の発生要因、利用意義と潜在力について論じたうえで、商品ビジネスの成功事例の特質等に関する論文を執筆した。
・水素燃料電池を搭載したマグロ養殖作業船の造船設計を行い、19トン型水素燃料電池養殖作業船の法定図面(一般配置図、総トン数計算書、中央断面図)等を作成した。さらに水素燃料電池の養殖作業船及びそれ以外の漁船への適用範囲、漁船に搭載した場合の水素燃料電池のエネルギーセキュリティ等の付加価値、水素燃料電池船実装シナリオをシミュレーションするための基礎的モデルを作成した。
〔アウトカム〕
・データベースに登録済みのオーミクス情報は、水産研究・教育機構が実施する他の研究開発課題に積極的に受け渡されており、重点研究課題1では重要魚類等の系群判別や親魚数の推定等、重点研究課題2では魚病研究や新規飼料開発、人工種苗の効率的生産等に幅広く活用されている。
・赤変病耐性を持つ選抜系統及びCGによる真珠色予測技術については、いずれも真珠養殖を行っている複数の県において、令和3年度から活用される予定。
・電位差を利用した漁場の底質環境の健全度をリアルタイムでモニタリングする技術は漁場での実証を終え、今後の実用化等について民間企業と協議中。
・これまでに得られた海洋酸性化の影響評価に関する成果を基に、令和2年度から後継課題(環境省・環境研究総合推進費「海洋酸性化と貧酸素化の複合影響の総合評価」及び文部科学省の科学研究費助成事業国際共同研究強化(B)「海洋酸性化が東部北太平洋沿岸・沖合域の植物プランクトンへの鉄供給に及ぼす影響」)が採択され、海洋環境及び生物生産への影響評価を開始した。
・マガキ採苗場への酸性化の影響を懸念したNPO法人によるpHモニタリングへ、観測ノウハウ等の技術移転を行った。
・ワムシ種培養及びタイラギ幼生飼育のマニュアルについては、すでに関係機関等において活用されている。
・細菌によるPOMの産生を人工的に再現した知見はウナギ仔魚の天然餌料の解明に繋がる結果であることから、水産庁のウナギ種苗の商業化に向けた大量生産システムの実証事業に成果を受け渡した。
・海洋表層CO2分圧に関する登録データがSOCAT2020として公開され、世界各国で炭素循環研究や環境行政に活用されている。
カテゴリ 育種 技術支援 規模拡大 炭素循環 データ管理 データベース DNAマーカー メタボローム解析 モニタリング

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