課題名 | 1 気候変動対策技術や資源循環・環境保全技術の開発 |
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研究機関名 |
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター |
研究分担 |
農村開発領域 社会科学領域 生物資源・利用領域 生産環境・畜産領域 林業領域 水産領域 熱帯・島嶼研究拠点 |
協力分担関係 |
農業・食品産業技術総合研究機構 森林研究・整備機構 国立環境研究所 東京大学 東京工業大学 東京農工大学 北海道大学 筑波大学 パナソニック IHI |
研究期間 | 2021-2025 |
年度 | 2021 |
摘要 | 気候変動に対処し、持続的な農林水産業と適切な資源管理を両立するため、以下の取組を行った。 カンボジアにおいて広域水管理調査地を決定し、温室効果ガス排出等の観測準備を進めた。また、ベトナム国アンジャン省の水田では間断かんがいにより、増収とメタンガス排出の低減ができることを明らかにした。ベトナムへ ICT 機材を導入し、通信試験実施後、圃場での運用を開始した。ミャンマーにおいて、かんがい貯水池の運用を分析し、洪水調整にも利用できることを明らかとした。水稲作と肉牛生産の複合システムから出るメタン発酵消化液の水田への施用は間断かんがいを組み合わせることで水田からのメタン排出を相殺できることを明らかにした。これまでに報告事例の無かった水稲再生二期作の水分消費割合を明らかにした。国内では、水稲増収のための予備試験を開始し、栽培環境の特定と栽培レシピの最適化を行った。また、過去40 年間の長期アーカイブのある衛星データを使ってミャンマーのデルタ域におけるかんがい設備の普及状況を調べ、沿岸域での塩害を示唆する結果を得た。フィリピン・ネグロス島の多様な環境及び土地利用からの土壌の分析結果から、熱帯湿潤地域における土壌炭素濃度は、粘土の量ではなく質に強く影響を受けること、炭素貯留ポテンシャルの高い土壌が存在することを確認した。ベトナム南部における肉牛ふんの主要な処理過程が天日乾燥であることを明らかにするとともに、チャンバー法を用いて当該過程における温室効果ガス排出測定を行い、当該国当該処理区分の排出係数に活用可能な値を算出した。 セルロース系バイオマスとして麦粕を選び、麦粕糖化菌の選別を行い、高い繊維糖化率を示す細菌を発見し、プロセス構築とともに特許出願を行った。本菌と類縁菌株との比較ゲノム解析では、同一相同性を持ち、自己複製型プラスミドを有していることを明らかとし、自己プラスミドを利用したオリジナルな形質転換系を構築できる可能性を示した。小規模パイロットスケールの炭酸ガス培養システムを構築し、自然界中から分離した藻類株の中から、カロテン様色素を蓄積する株の選抜に成功した。さらに本株は強光条件下で、クロロフィル色素に対するカロテン様色素量が増加することを明らかにした。オイルパーム農園では、植栽個体の生長に伴う放置残渣の増加が土壌からの CO2量を増加させ、植栽後約 15-17 年で CO2 発生量が熱帯雨林と同等になることを明らかとした。また、土壌微生物群集内のセルラーゼ関連遺伝子量と CO2 発生量との間に比較的高い相関があり、CO2発生量の広域推定のパラメータとなることが考察された。インドネシアのバンダールランプンとバリクパパンから採取したオイルパームトランク(OPT)の葉で発現する遺伝子の網羅的解析により、アミラーゼ活性や異化活性に関する遺伝子で有意な発現量の差を確認し、乾期と雨期の間で遺伝子発現量に差があることを明らかとした。オイルパーム古木の慣例的農地還元は、窒素欠乏による生育不良や土壌中に Trichocladium 属菌を有意に増殖させ、土壌環境に負の影響を与えることを明らかとした。原料マルチ化プロセスを開発し、OPT 以外にもパーム空果房(EFB)及びパーム葉柄(OPF)を同一プロセスにて処理出来る技術を開発し権利化を進めた。 オオハマニンニク由来の BNI 能を導入した BNI 強化コムギ 2 系統(BNI-Munal 及び BNIRoelfs)について、国際農研試験圃場での評価を実施し、少ない肥料で高い生産性を示し、窒素肥料による環境負荷が低減する BNI 強化による効果を確認した。トウモロコシの主要な疎水性BNI 物質(ゼアノン、HDMBOA、HMBOA、HDMBOA-β-グルコシド)を見出した。さらに、水溶性 BNI 物質として MBOA を見出し、その用量-反応曲線がいままでの BNI 物質と異なるパターンを示すことを明らかとした。これらの BNI 物質により、トウモロコシにおける BNI 作用の疎水性の45%、親水性の 69%を説明することができた。土壌硝化細菌及び古細菌のアンモニアモノオキシゲナーゼ遺伝子(amoA)について、黒ボク土から土壌 RNA を抽出するプロトコルを確立し、ソルガム試験圃場土壌の RT-qPCR を実施したところ、硝化細菌、古細菌とも DNA の定量に比べ、発現している amoA のコピー数は 1%以下であった。国際半乾燥熱帯作物研究所(インド)で実施しているソルゴレオン含量を指標とした RIL 集団は F4 世代となった。今後、F7 世代(F6 世代の種子)を国内に送付することとした。ブラキアリア-トウモロコシ輪作において、ブラキアリア後作の トウモロコシ生産でのブラキアリア由来 BNI の残存効果を検討し、4 年経過したブラキアリア後作のトウモロコシに対しても BNI の効果が残存することを確認した。土壌中における BNI 物質の効果を検証するため、アンモニウムイオンの存在下で黒ボク土でのトウモロコシの BNI 物質ゼアノンと MBOA の挙動を測定し、土壌においても硝化を抑制することを見出すとともに、これらの BNI物質は土壌微生物の作用により徐々に分解されることを見出した。BNI 強化コムギによる温室効果ガス削減効果を予測するため、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)ガイドラインに基づいた手法に BNI 関連の補正を行い、ライフサイクルアセスメントを加味した温室効果ガス削減効果の予測評価を実施し、2030 年、2050 年までの BNI 強化コムギの効果を科学的に推定した。現状の BNI 強化コムギの適地である弱酸性から中性の土壌をもつ地域に導入が行われた場合、全世界のコムギ生産からの GHG 発生量の 9.5%を削減できることを見出した。 材の密度と乾燥耐性の指標の一つである通水欠損割合の関係を東北タイ季節林の落葉樹 9種の既存データから調べ、材密度が高いほど乾燥耐性が高くなるという関係から、乾燥耐性の指標として材密度を利用できる可能性を示した。フタバガキ科の葉の成長率は、同じ場所に植えても地域個体群間で有意な差があること、また葉を切除することで、抑制されることを明らかとし、展開する葉を指標にした葉の伸長のタイミングとその制御要因の解明の可能性を示した。フタバガキ科の Shorea leprosula のゲノム配列の解析結果から、フタバガキの乾燥応答遺伝子は、他の遺伝子に比べて重複した状態でより多く残っていることが分かり、乾燥に対して頑健な植栽樹種の選定や選抜・育種を目指した研究への有効性を示した。ゲノム選抜育種技術の開発を目指し、育種集団の選定とゲノム情報から表現型を推定するモデル作成手法の開発を行なうため、ガジャマダ大学の Shorea macrophylla 次代検定林の 290 個体について、14,923 座の SNP を特定し、樹高では有意な SNP を5座検出した。熱帯林樹木の既存データを解析したところ、樹種に関係なく、葉の硬さは厚さと葉脈の透過度に依存することがわかり、林業樹種として重要なフタバガキ科樹木の葉はすべて透過度の高い葉の形質を持っていることがわかった。林業樹種の成長モデル構築のため、マレーシア・ペラ州チクス地区で約 30 年前に JICA が行ったフタバガキなど郷土樹種の植栽試験地を候補に、植栽 22 年後の Shorea parvifolia についてデータを精査し、伐採幅が大きくなると直径成長は増加するが生存率は大きく低下することを明らかにした。ラオスのチーク造林地では立地条件と植栽密度によって、植栽木の肥大成長及び樹高成長に 2 倍程度の差があることと、植栽の適地条件を明らかにした。マレーシアとインドネシアの複数の森林・林業形態での使用を目的に、多地点で CO2/CH4の同時測定が可能なポータブルチャンバーシステムを構築した。遺伝的多様性に関する成果、植栽適地などの成果を活用し、環境への適応を考慮した遺伝資源の保全、植栽手法の提供を行うために、主要な CP 機関である、マレーシア森林研究所、タイ王立森林局、ガジャマダ大学林業学部とオンラインで協議を行い、フタバガキ、チーク、ローズウッド、ファルカータの4林業樹種群を本プロジェクトの主要対象樹種として選定した。SATREPS熱帯林強靭化では、課題実施のための詳細計画策定調査、当該国実施機関との契約などを完了した。 石垣島産製糖副産物(バガス)をきのこ菌床、苗木培地に混入させ、それぞれ栽培に利用可能であることを確認した。熱帯島嶼の山地に適合し、土壌流出抑制等に利用価値の高い有用樹4樹種、果樹2種(3品種)、菌種2種を選定した。熱帯・島嶼研究拠点に施工した地下かんがいシステムでの土壌水分観測を開始し、設置深度の違いによる水分特性を明らかにした。ガラス室内で炭化物を用いたパイプ試験から、炭化物を施用した場合に硝酸態窒素の溶脱が抑制されることを確認した。石垣島のパイナップル栽培において、施肥後2週間で施肥窒素の 90%が流出すること、そして追肥窒素の施肥効率は 10%と低いこ と、また窒素肥料を地表に施肥した場合と被覆後埋設処理した場合とでは、前者の方がより多く溶出することを明らかにした。フィリピンにおいてサトウキビのバイオマス利用に関する調査により、植え付け及び収穫時期の異なるサトウキビ栽培では、糖+繊維収量は12 カ月収穫で最大となることを明らかにした。熱帯・島嶼研究拠点及びフィリピン(ネグロス島、ルソン島)での深植え栽培試験を実施し、土壌水分量は土壌深度の違いで異なることを明らかとした。屋内ライシメーターの試験により、エリアンサス及びサトウキビとエリアンサスの属間雑種 F1 は、サトウキビに比べて根への乾物分配が大きく、硝酸態窒素溶脱量が低く推移することを明らかにした。製糖廃水を中和することで微細藻類が増殖可能であることを見出し、さらに保有株から製糖廃水処理に適した有望株を選抜した。石垣島内での野外調査により、対象とする海藻 2 種の分布概要を明らかにした。宮良川でのマングローブの物質生産を定量化するための調査地を設置し、環境 DNA 調査プロトコル案を設計した。石垣島の主要河川を対象とした水文水質調査により収集したデータを機械学習手法により解析し、河川水中の栄養塩(窒素、リン、ケイ素)濃度は流域特性(土地利用、表層地質)に強く依存することを明らかにした。特に、サトウキビ畑及び畜舎の各面積割合の窒素濃度に対する重要度が高く、農畜産業の寄与が大きいことが示唆された。農家による赤土等流出防止対策の実施について、沖縄県での対策は定着段階であることを確認した。石垣島での作物及び家畜生産の窒素フローを整理し、環境中に排出される量の多寡を表す窒素フットプリントの算出結果から、環境負荷の高い生産物及び生産過程を特定した。 ブルキナファソ環境農業研究所(INERA)サリア支所での 4 年間の圃場試験の結果、「耕地内休閑システム」の導入により収量を 1.5 倍にできる可能性を示した。また、収益性をさらに高めるための改良試験を開始した。石積み工と列状植栽工の複合技術について、施工費及び利益を評価し、投資回収期間並びに将来にわたる利益について明らかにした。現地ニーズに沿った保育ブロックの大型化と耐久性向上に向け、最適となる土壌と有機物の混合比を概定した。調査体制の構築、調査地の選定及び情報収集、質問票を作成するための聞き取り調査を実施し、経済実験対象地域において農家の家計状況、土壌劣化に対する認識、さらに「耕地内休閑システム」への評価に関する情報を得た。ブルキナファソ南部及び北部の農家圃場に 3 本ずつ設定したライントランセクトで土壌調査を実施し、各地点における鉄石固結層の出現深度から土壌型を明らかとし、スーダンサバンナで優占する 3 つの土壌型の試験候補地を決定した。ブルキナファソ南北の試験候補地近辺で予備的な畑作物栽培試験を実施し、地域と播種期の組み合わせにより幅広い強度の干ばつ試験が可能であることを確認するとともに、土壌型や干ばつの時期により収穫量を最大化する作物が異なることを示した。土壌水分量の計算値が実測に近い傾向を示すよう土壌水分モデル HYDRUS の保水性パラメータの最適化及び透水係数の調整を行った。干ばつリスクマップの作成には衛星全球降水マップと農業統計データの利用が有効であることを確認した。 インドでのライシメーター及び圃場試験に適用する地中かんがい用ウォータードロップチューブの埋設深(20cm)、カットソイラー(浅層暗きょ)の施工間隔、そして、土壌分析項目・分析頻度についてインド側 CP 機関と合意し、11 月下旬より試験区の設定に着手した。熱帯・島嶼研究拠点において、ウォータードロップチューブの埋設深が 20cm であれば、生育に悪影響無く節水できることを確認した。インドの地下水観測データから、雨期に地下水位が約 3m 低下すること、降雨に見合わない過剰取水が帯水層中でアップコーニング(塩類塊の巻き上げ)を引き起こしている可能性があることを確認した。 |
キーワード | 気候変動対応、GHG排出抑制、カーボンリサイクル、生物的消化抑制、BNI、環境適応型林業、熱帯島嶼環境保全、乾燥地持続的土地管理 |
カテゴリ | 肥料 ICT 育種 遺伝資源 乾燥 気候変動対策 水田 施肥 ソルガム とうもろこし 土壌環境 肉牛 にんにく パイナップル 播種 バンダ 光条件 品種 水管理 メタン発酵消化液 輪作 |