タイトル |
落水出芽法を用いた水稲直播栽培の安定多収技術 |
担当機関 |
(独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター |
研究期間 |
1999~2003 |
研究担当者 |
丹野 久
佐々木 亮
田中 英彦
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発行年度 |
2003 |
要約 |
落水出芽法の水稲直播栽培において、幼穂形成期までの窒素吸収量を高めることが収量確保のために重要であり、そのためには溶出の早いタイプの緩効性肥料による側条施肥が有効である。褐色低地土地帯では過酸化石灰粉粒剤なしの催芽籾を乾籾換算10~12kg/10a播種し、落水期間を慣行+3日に延長することで苗立ちを確保しつつ低コスト化が可能である。また、栽培適地を簡易有効積算温度により品種別に選定できる。
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キーワード |
過酸化石灰、緩効性肥料、水稲湛水直播、施肥法、適地マップ、落水出芽法
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背景・ねらい |
落水出芽法の導入により水稲直播栽培の苗立ちはかなり安定したが、移植栽培に比べ収量性が依然として低く、過酸化石灰粉粒剤などの追加資材を必要とするため、必ずしも低コストになっていない。また、湛水直播栽培の適地について、これまで十分な検討が行われていない。そこで、安定多収のための施肥法と催芽籾による播種および適地マップの策定を検討する。
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成果の内容・特徴 |
- 目標収量を500kg/10aに設定し、この収量を得るための窒素吸収量を求めると、落水出芽法による直播栽培の一般作付品種である「ゆきまる」の場合、幼穂形成期までに4.5kgN/10a、出穂期までに8.0kgN/10a、成熟期までに11.0kgN/10aである(表1)。また、収量は、特に幼穂形成期までの窒素吸収量が多いほど高い。
- 側条施肥は初期生育の促進に効果があるが、一般に使われている速効性肥料だけでは全層施肥に比べ施肥窒素利用率が劣るため、緩効性窒素肥料を利用することが必要である。目標収量を得るには、溶出の早いタイプの緩効性肥料(25℃20~30日タイプを窒素成分の50~100%配合)を用いた側条施肥と全層施肥の組み合せ法が適するが、褐色低地土(施肥ガイドの良地帯に限定)では全量全層施肥が適している(表1)。
- 播種後行う落水処理の日数は、日最高最低平均気温から6℃以上の気温を播種翌日より積算して80℃に達する日により、±2日の誤差で推定できる。
- 過酸化石灰被覆なしの催芽籾による栽培は、苗立ちが安定している褐色低地土において、初期生育の良好な地帯では播種量を10a当たり乾籾換算10kg、その他の地帯では同12kgとし、落水期間を慣行に比べて3日長くすることで可能である(表2、表3)。
- 現地圃場における苗立ち不良の原因には、播種後の落水不良や土壌水分pF=2をこえる過乾燥が認められ、これらを防止するための水管理が重要である。なお、pF=2は褐色低地土においてゴルフボールを1m落下させ跡がつく程度である。
- 「ゆきまる」、「ほしのゆめ」および「きらら397」について、播種翌日から出穂期までの簡易有効積算温度により出穂期を予測し、移植栽培指標による出穂晩限後3日以内に出穂する市町村を栽培適地とする(表4、図1、図2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 水稲湛水直播栽培基準(平成16年1月)に基づいて実施する。
- 適地と判定された市町村にあっても、地区の標高や風当りなどから有効積算温度を考慮し、実施圃場を選定する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
肥料
安定多収技術
乾燥
直播栽培
水稲
施肥
低コスト
播種
品種
水管理
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