タイトル | 食品の温度管理不備を簡単に検出する技術の開発 |
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担当機関 | (独)食品総合研究所 |
研究期間 | 2002~2005 |
研究担当者 |
Md. Latiful Bari 一色賢司 稲津康弘 川崎晋 川本伸一 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 食品の温度管理のための安全・安価な微生物センサーを開発した。センサー自体は、 パン酵母と糖(ブドウ糖)などからなる溶液をフィルムに密封した単純なものであ る。温度管理不備により配送中の温度が上昇すると、炭酸ガスが増えて袋が膨らみ 誰にでも肉眼で異常が確認できる。低温(4°C)から常温(25°C)までの温度管理 に利用可能である。 |
キーワード | 冷凍耐性パン酵母、微生物センサー、温度管理、食中毒リスク、フードチェーン |
背景・ねらい | 食品の食感・機能性・栄養性などを重視した生食志向がもてはやされる時代となり、生鮮食品など非加熱食品の消費が急速に伸びている。このような食品の微生物学的安全性確保には、製造・流通 過程における低温での温度管理は有効な手段であるが、温度管理の不備は、食中毒事故等の要因とな りうる。最近では、低温でも増殖可能なリステリア菌等の病原菌による食中毒事例が欧米先進国で報 告され、我が国でも食品の温度管理の厳密さが求められるようになってきている。そこで温度管理の 不備に伴う食中毒リスクの回避を目的として、パン酵母を用いた安価かつ簡便な温度管理用微生物セ ンサーを開発した。 |
成果の内容・特徴 | 1. 開発した温度管理用微生物センサーは、酵母がパンを膨らます原理、すなわち酵母が糖を発酵 して炭酸ガスを放出するが、その発酵は温度が高くなるほど活発になることを利用している。 センサー自体は、冷凍耐性パン酵母・糖(ブドウ糖)・酵母エキス・グリセロールよりなる溶液 を気密性のラミネートフィルムに密封した単純なものである(図1)。その内容物はすべて安全 な食品添加物である。温度管理不備により配送中の温度が上昇すると、炭酸ガスが増えて袋 が膨らみ誰にでも肉眼で異常が確認できるセンサーである。 2.このセンサーは、冷凍耐性パン酵母を用いているため、使用まで作製後1週間は安定に凍結保存 できる。食品によって低温流通の管理温度は異なるが、パン酵母と糖の量を調整すれば、品目毎 に温度や流通時間の設定を変えて、雰囲気温度記録用データーロガーと異なり、パック毎の温度 管理が可能なオリジナルのセンサーを作ることができる(図2)。 3.開発した液体粘体高速自動充填機により、センサーを低コスト(1個数円程度)で大量生産(1 時間に24,000個以上のセンサー生産能力)できる。個々のパッケージ商品へのセンサーの貼り付 けを容易にする自動連続両面テープ貼り合わせカット機も開発した(図3)。 4.夏期の青果物の低温流通での実証試験でも良好な成績をおさめ、共同研究先の大成ラミック株式 会社より実用化された。フードチェーンや家庭での低温管理への利用が期待できる(図4)。 |
成果の活用面・留意点 | 開発したセンサーは、コンビニ、中食、外食等のコールドチェーンにおいて低温配送される非 加熱や加熱食品などの個々のパッケージに製造工場の出荷段階で貼れば、流通段階や家庭での温度 管理に不備がないかどうかがつかめ、食中毒の防止などの衛生管理に役立つことが期待される。また 生鮮野菜や果実などの低温流通で、適切な積載方法を確かめる試験などにも活かすことができる。 |
カテゴリ | 温度管理 機能性 出荷調整 低コスト |