ヨトウガ核多角体病ウイルスの殺虫効果は顆粒病ウイルス由来タンパク質の添加によって向上する

タイトル ヨトウガ核多角体病ウイルスの殺虫効果は顆粒病ウイルス由来タンパク質の添加によって向上する
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業総合研究センター
研究期間 2004~2008
研究担当者 後藤千枝
小堀陽一(国研セ)
務川重之
鈴木芳人
発行年度 2008
要約  ヨトウガ核多角体病ウイルス東京株(MabrNPV-T)は、ヨトウガ、オオタバコガ、タマナギンウワバ幼虫にほぼ同等の感染性を持つ。本NPV株に顆粒病ウイルス由来のタンパク質を添加すると上記3種の害虫に対する感染力が強化され、殺虫効果が向上する。
キーワード 核多角体病ウイルス、顆粒病ウイルス、感染力増強、ヨトウガ、オオタバコガ
背景・ねらい  ヨトウガ核多角体病ウイルス東京株(MabrNPV-T)とシロモンヤガ顆粒病ウイルス(XecnGV)は昆虫に特異的な病原性ウイルスであり、人畜に対する高い安全性と低い環境影響という特性を兼ね備えた害虫防除の素材である。MabrNPV-Tは数種類のヤガ科害虫に感染性を持つこと、またXecnGVはNPVの感染力増強作用を持つことが知られており、これらを組み合わせることによって複数害虫に対して高い殺虫効果を持つ防除剤が開発できると考えられる。そこで、人工飼料を用いた詳細な生物検定を実施し、ヨトウガ、オオタバコガ、タマナギンウワバの幼虫に対するMabrNPV-Tの感染性ならびにXecnGVのNPV感染力増強効果を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 2齢幼虫を用いて行った食餌混入法による生物検定では、ヨトウガ、オオタバコガ、タマナギンウワバ幼虫に対するMabrNPV-Tの中央致死濃度は、オオタバコガでやや低いものの、ほぼ同等であり(表1)、3種の感受性には大きな差はないと考えられる。
  2. 多角体にXecnGV顆粒体のアルカリ可溶性画分(GVPs)を0.1mg/g飼料の濃度で添加することによって、ヨトウガ、オオタバコガ、タマナギンウワバの3種幼虫に対するMabrNPV-Tの感染力を増強することができる。GVPsを添加したMabrNPV-Tの中央致死濃度は、ヨトウガでは無添加の場合の約70分の1、オオタバコガでは約20分の1に低下する。反復間のばらつきは大きいが、タマナギンウワバでも同様の効果が認められる(表1)。
  3. ヨトウガの場合、同等の死亡率が得られるGVPs添加区とNPV単独接種区(例えば前者は104多角体数/g飼料区、後者は106多角体数/g飼料区)で感染個体の致死日数と致死ステージを比較すると、GVPs添加区の方が致死日数が短く、3齢で致死する個体の割合が高い(図1)。この結果は、GVPsの添加が感染幼虫による作物被害の低減効果を持つ可能性を示している。
成果の活用面・留意点
  1. ウイルスの感染性は餌の種類によって変わることがあるため、施用濃度の設定に際しては、防除する作物を用いた生物検定を行うことが望ましい。
  2. 本ウイルスは農薬登録されていないため、試験目的以外では使用することはできない。

図表1 211739-1.gif
図表2 211739-2.gif
カテゴリ 病害虫 害虫 農薬 防除

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