濡れ雪の強度を測定する

タイトル 濡れ雪の強度を測定する
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 山野井 克己
遠藤 八十一
発行年度 2001
要約 湿雪雪崩の発生条件を解明するために、積雪のせん断強度、密度および含水率の測定を行った。その結果、積雪がある面に沿ってずれることに抵抗するせん断強度は、乾き密度のべき乗に比例して増加すること、ならびに体積含水率の増加と共に指数関数的に減少することが判った。
背景・ねらい 雪崩危険度の予知のためには、斜面での積雪の力学バランスが重要な要素である。雪崩発生の条件として考えなくてはならない力は、積雪を動かす駆動力(積雪に働く重力の斜面方向の分力)と、積雪がある面に沿ってずれることに抵抗するせん断強度である(図1)。駆動力せん断強度の時は積雪は安定しており雪崩は発生しないが、駆動力>せん断強度になると積雪は不安定となり雪崩が発生する。駆動力は斜面傾斜と積雪の重量(積雪の深さ×積雪の密度)により決まるが、せん断強度は雪質、密度、含水率、雪温など様々な因子が影響する。既存の研究で乾いた(雪温が氷点下で液体の水が含まれていない)新雪、こしまり雪およびしまり雪のせん断強度と密度の関係は解明されているが、濡れ雪(雪温が0℃で液体の水が含まれる)やしもざらめ雪については不明な点が多い。本州に広く分布する温暖積雪地域では、濡れ雪が関わる雪崩が多数発生していることから、濡れ雪のせん断強度の特徴を明らかにする必要がある。
成果の内容・特徴 自然積雪において、せん断強度の測定を行った。写真1に示すように、円筒型のせん断器を積雪に挿入して腕を接線方向に引っ張ると、せん断器の底面付近で積雪は脆性破壊を起こす。その時の最大荷重から積雪のせん断強度σ(Pa)が計算できる。新雪、こしまり雪、しまり雪、ざらめ雪について、せん断強度と乾き密度ρdry(単位体積中の氷の部分の重さ)の測定値の関係を図2に示す。乾き雪のせん断強度は乾き密度のべき乗の関数で表すことができ、σ=Κρdry2.91となった。ここで、乾いた新雪、こしまり雪およびしまり雪の場合は図2の実線となりΚ=9.40×10-4、乾きざらめ雪の場合は図2の点線となりΚ=4.97×10-4である。

濡れ雪は乾き雪に比べてせん断強度が小さく、含水率が大きくなるほどせん断強度が小さくなる傾向が見られた。せん断強度の低下率Α(濡れ雪のせん断強度/乾き雪のせん断強度)と体積含水率θ(単位体積中の水の体積割合%)の関係を図3に示す。せん断強度の低下率は体積含水率の指数関数で表すことができ、Α=e-0.235θとなった。乾き雪の場合はθ=0に相当し、Α=1となる。以上の関係式をまとめると、
新雪、こしまり雪およびしまり雪:σ=9.40×10-4ρdry2.91e-0.235θ
ざらめ雪:σ=4.97×10-4ρdry2.91e-0.235θ
となる。

せん断強度の推定式の検証のため積雪断面観測を行い、せん断強度の測定値と上式による推定値を比較した(図4)。図中の網をかけた部分が濡れ雪で、それより上方は乾き雪である。測定値と推定値はほぼ一致し、積雪の密度、体積含水率および雪質からせん断強度を推定することができた。
図表1 212555-1.gif
図表2 212555-10.png
図表3 212555-2.jpg
図表4 212555-3.gif
図表5 212555-4.gif
図表6 212555-5.gif
図表7 212555-6.png
図表8 212555-7.png
図表9 212555-8.png
図表10 212555-9.png
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