マツノザイセンチュウのセルラーゼ遺伝子の発見 -マツノザイセンチュウはカビから遺伝子をもらった?-

タイトル マツノザイセンチュウのセルラーゼ遺伝子の発見 -マツノザイセンチュウはカビから遺伝子をもらった?-
担当機関 (独)森林総合研究所
研究期間
研究担当者 菊地 泰生
相川 拓也
小坂 肇
小倉 信夫
発行年度 2004
要約 松枯れの元凶マツノザイセンチュウから発見したセルラーゼの遺伝子は、これまでに知られている植物寄生線虫のセルラーゼとは異なり、菌類のものと酷似していました。このことはマツノザイセンチュウが進化の過程で菌からセルラーゼ遺伝子を得た可能性を示しています。
背景・ねらい マツノザイセンチュウはマツの樹体に寄生し、マツ材線虫病(いわゆる「松枯れ」)を引き起こします。その被害は甚大で、毎年日本各地で多くのマツが枯死しています。被害を食い止めるため薬剤散布を中心とした防除が行われてきましたが、最近では環境にやさしい対策がもとめられています。私たちは線虫がマツにどのように寄生し樹体内に広がり、枯死させるのか、そのメカニズムを深く理解するため、マツノザイセンチュウの遺伝子を網羅的に解析し、寄生メカニズムを分子レベルで探ることが必要と判断し、寄生に関与する遺伝子を探索する研究に取り組んできました。
成果の内容・特徴

セルラーゼ遺伝子の発見

遺伝子探索の過程で、マツノザイセンチュウからセルラーゼ(植物細胞壁の分解に関与する酵素)の遺伝子を発見しました(図1)。詳しく調べたところ、このセルラーゼは線虫の体内で生産され、口針から分泌されていることが明らかになりました(図2)。つまりマツノザイセンチュウはこのセルラーゼをマツの樹体内で分泌して植物細胞壁を柔らかくし、寄生しやすくしていると考えられます。

セルラーゼ遺伝子はどこからきたか

マツノザイセンチュウのセルラーゼはファミリー45というグループに分類されるものでした。このファミリーのセルラーゼは、これまでに他の植物寄生線虫で発見されているセルラーゼとは全く異なるタイプのもので、線虫類として最初の発見であることが分かりました。さらに興味深いことに、このセルラーゼは菌類(いわゆるカビの仲間)のセルラーゼと大変よく似ており(図3)、このセルラーゼ遺伝子が進化の過程で種の壁を越えて菌類から線虫へ移動してきた(水平転移した)可能性が考えられました。これまで知られていた植物寄生線虫(ネコブセンチュウ、シストセンチュウなど)のセルラーゼもやはり植物寄生に関与していますが、そのセルラーゼはカビではなくバクテリアのものとよく似ており、バクテリアからの遺伝子水平転移によって獲得されたと考えられています。
このように、マツノザイセンチュウは植物に寄生する能力に関して、他の植物寄生線虫とは異なる進化過程を経たこと、さらに線虫の植物寄生能力の進化には遺伝子の水平転移が関与しているらしいことが分かりました。この研究成果は、生物進化(特に寄生能力の進化)やマツ材線虫病の発病メカニズムの理解に貢献するものと期待されます。

本研究は、交付金プロジェクト「マツノザイセンチュウESTプロジェクト」による成果です。

詳しくは:Kikuchi, T., Jones, J. T., Aikawa,T.,Kosaka, H., and Ogura, N. (2004). FEBS Letters. 572, 201-205 をご覧下さい。
図表1 212614-1.gif
図表2 212614-2.jpg
図表3 212614-3.gif
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カテゴリ 病害虫 防除 薬剤

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