| タイトル | 森林土壌で水を移動させる粗大孔隙の働き |
|---|---|
| 担当機関 | (独)森林総合研究所 |
| 研究期間 | |
| 研究担当者 |
篠宮 佳樹 吉永 秀一郎 小林 政広 |
| 発行年度 | 2008 |
| 要約 | 豪雨時の土壌からの水流出量を解析した結果、森林土壌中では粗大孔隙が多量の降雨を土壌の深い場所へ迅速に送る機能を持つことで、土壌の保全や養分の流出防止に大きな役割を果たしていることを明らかにしました。 |
| 背景・ねらい | 樹冠を通過して地表に到達した雨水は、森林土壌に浸み込み、やがて渓流水として流出します。森林土壌には大小さまざまな隙間(ここでは孔隙:こうげきといいます)があり、水はその中を動きます。細かな孔隙では表面張力がより強く働くため、水が引き込まれやすく、水の動く速さは遅くなります。また、細かな孔隙中の水は土の粒子と充分に反応して、いろいろな成分を溶かし込みます。しかし、大きな孔隙の水の動きに対する働きについてはよくわかっていませんでした。 そこで、私たちは高知県の森林で土壌中の水の移動量と貯留量を測定し、豪雨の時の水の動きにおける大きな孔隙の果たす役割を明らかにしました。 |
| 成果の内容・特徴 | 土壌が貯める水の量には限界が・・・年平均降水量が2,500mmを超え、また、一雨の降水量が100mmを超えるような豪雨の回数も多い四国山地の太平洋側には、急傾斜で長大な斜面が広く分布しています。これらの斜面に広がる土壌は、往々にして礫を多く含み、深さ1mに達しないうちに基盤の岩石が現れるような薄い土壌です。このため、森林土壌自体が有する水貯留量はそれほど多くないと推定されます。私たちが調査した斜面では、土壌の厚さは60cm程度でした。この土壌の水貯留量は降水量の増加とともに増えますが、豪雨の時の水貯留量は雨量に換算して60mm程度で頭打ちになりました(図1)。余った雨水はどこに行ったか土壌の水貯留量が変化しなくなると、深さ50cmに設置した採水装置から水が流出し始めるようすが一緒に観測できました。この採水装置は、土壌中にチリトリのようなものを差し込み、それにチューブを繋いだもの(図2)で、装置直上の土壌が完全に水で満たされたときに初めて水を採取し始めます。そして、採水量は降雨強度が強くなるとすぐに増加し、弱くなるとすぐに減少しました(図3)。しかし、一雨の降水量が50mm以下だと、採水装置からの流出はほとんど起きていません(図4)。さらに、豪雨時の雨水と採水装置から流出してきた水の電気伝導度を測ったところ、両方の水の電気伝導度はほとんど同じ値でした。つまり、降った雨がそのまま土壌を素通りして下層土から流出していることがわかりました。これらのことは、土壌で貯留できなくなった過剰な雨水が、土壌中を素早く流れて排水されていることを示しています。水はどこを流れたか森林土壌には、ミミズのような土壌動物の移動や樹木根の腐朽などによって形成された直径数mm程度の粗大孔隙が特に地表近くに多く認められます。豪雨の時にはこれらの粗大孔隙に雨水が吸い込まれるように流れて、土壌流失の原因となる地表流が起きにくくなっています。また、土壌が一定量の雨水を貯留した後には、過剰な雨水を粗大孔隙のネットワークを通じて基岩や斜面下方へと直接流しているのです。このように粗大孔隙のネットワークの存在は、土壌粒子に吸着されている貴重な養分の流失を防ぐとともに、土壌が完全に水浸しになって山崩れが起きることも少なくさせているのです。詳しくは、篠宮佳樹ほか (2007) 水文・水資源学会誌、21:126-139 をご覧ください。 |
| 図表1 | ![]() |
| 図表2 | ![]() |
| 図表3 | ![]() |
| 図表4 | ![]() |
| カテゴリ |
| 素材(製材品)の耐火性能 |
| 糸状菌及び天敵昆虫によるマツノマダラカミキリ防除法の開発・天敵微生物の利用法の確立 |
| 汎針広混交林帯天然林における森林植生と土壌の炭素固定能 |