タイトル |
種間交雑による新しいツバキ‘春待姫’、‘彩祭り’、‘雪祭り’ |
担当機関 |
(独)農業技術研究機構 花き研究所 |
研究期間 |
1989~2001 |
研究担当者 |
柴田道夫
家弓実行
間 竜太郎
岸本早苗
谷川奈津
小野崎 隆
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発行年度 |
2001 |
要約 |
ツバキとチャとの雑種である‘春待姫’は、わい性で、白地にピンク絞りのごく小輪の花を秋から春にかけて多数開花させる。テオプシス節野生種間の雑種である‘彩祭り’、‘雪祭り’は、直立性でやわらかな樹姿を示し、ピンクと白のごく小輪の花を早春に多数開花させる。
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キーワード |
種間交雑、ツバキ、チャ、テオプシス節、小輪多花性、絞り花色、紅白
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背景・ねらい |
わが国ではツバキ属植物について、ツバキとサザンカがよく利用されている。ツバキ属内では幅広い種間交雑が可能であり、これまで海外を中心に多くの種間雑種が作出されてきているが、わが国における種間雑種の利用はそれほど多くない。新しいタイプのツバキを開発することは、ツバキ類の需要拡大に直接的に役立つほか、昭和40年代以降ほとんど生産面積が伸びていない花木類の生産振興につながるものと期待される。そこで、ツバキ(Camellia japonica)とチャ (C. sinensis)との間、およびツバキ属テオプシス(Theopsis)節野生種間の種間交雑により、小輪多花性で早咲き性を有するなど、鉢物用に適した新しいタイプの雑種の育成を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 旧野菜茶試久留米支場緑化植物研究室(枕崎)において、1990年秋にツバキ品種‘小紅葉’を種子親、チャ品種‘やまとみどり’を花粉親として、1990年春にテオプシス節野生種のローゼフローラを種子親、シラハトツバキを花粉親として交雑を行い、得られた雑種を1993年9月に三重県安濃圃場に定植した。1998年、系統‘6+19’に‘ツバキ安濃1号’、‘1+2’と‘1+6’に‘同2号’、‘同3号’を付して、1999年から3カ年にわたり系統適応性検定試験を実施した結果、実用品種として有望と判定された。
- ‘春待姫(安濃1号)’はツバキとチャとの種間雑種であり、両者の中間的な特性を示す。白地(JHSカラーチャート2201)にピンク(同9504)の縦絞りが入るツバキとチャとの交雑では初めての斑入り花色である(図1左)。
- ‘春待姫’は花径3cm程度、花弁数6~7枚のごく小輪の花を多数着生し(表1)、三重県における露地での自然開花期は、12月上旬~4月下旬である(表2)。
- ‘彩祭り(安濃2号)’、‘雪祭り(安濃3号)’は立性で垂下気味の淡緑色の葉を着生する独特の樹姿を有し、ツバキやサザンカとは異なった明るくやわらかなイメージを与える(図2)。
- ‘彩祭り’はピンク(JHSカラーチャート9504)、‘雪祭り’は白(同2201)の花色で、両品種とも花径3cm程度、花弁数5~6枚のごく小輪の一重の花を、多数着生し(図1中・右、表1)、三重県における露地での自然開花期は2月上旬~4月中旬である(表2)。
- 3品種とも挿し木繁殖が可能で、幼木でも着らいしやすい特性を有し、鉢物用ツバキとして適する。
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成果の活用面・留意点 |
- 鉢物用の新しいタイプのツバキ種間雑種で、全国のツバキ苗生産地で栽培可能である。
- ‘春待姫’では、絞り花色が拡がって全体がピンク色となった花が偏って咲く場合がある。増殖の際には花色がピンク色に偏った部分からの採穂を避ける。
- ピンク色の‘彩祭り’と白色の‘雪祭り’は、対にした生産出荷が可能と思われるが、蕾の着生率および苗の初期生育について若干品種間差がある。また、両品種とも、挿し木発根性はあまり高くないので育苗期間をやや長めにする必要がある。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
育苗
カラー
栽培技術
挿し木
出荷調整
需要拡大
茶
繁殖性改善
品種
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