タイトル | エチレン前駆体であるACC処理による硬肉モモ果実の軟化制御 |
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担当機関 | (独)農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 |
研究期間 | 2005~2007 |
研究担当者 |
羽山裕子 樫村芳記 中村ゆり 立木美保 |
発行年度 | 2008 |
要約 | 成熟期のエチレン生成が遺伝的に抑制されており成熟期になっても軟化しない硬肉モモは、エチレン前駆体であるACCを処理することにより、エチレンを生成し果肉硬度を低下させる。また、ACC濃度によりエチレン生成量および軟化の程度を制御できる。 |
キーワード | エチレン、硬肉モモ、果肉軟化、ACC |
背景・ねらい | 一般に栽培されているモモ果実は、成熟に伴いエチレンを生成し果肉が軟化する。我が国では軟らかい肉質のモモが好まれているが、モモは軟化速度が速く、食べ頃となる適度な肉質を維持することが困難である。一方、モモには成熟期のエチレン生成が遺伝的に抑制されており成熟期になっても軟化しない硬肉タイプのモモ(硬肉モモ)がある。これまでの研究により、硬肉モモはエチレンを処理すると軟化するが、エチレン処理を停止すると軟化が停止し、人為的に軟化を制御できることが明らかにされているが、硬肉モモを適度に軟化させるためにはエチレンを2~3日間通気処理する必要があるため実用的ではない。硬肉モモのエチレン生成の抑制はエチレンの前駆体である1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸(ACC)の生成が抑制されていることに起因する。そこで、ACCを処理し、硬肉モモを簡便に軟化させる技術を開発する。 |
成果の内容・特徴 | 1.硬肉モモ「おどろき」の成熟果実は無処理ではほとんどエチレンを生成しないが、ACC溶液を散布処理することにより処理翌日にエチレンを生成し、その後急激に減少する(図1)。エチレンの生成量は、処理するACC濃度に依存しており、ACCの処理濃度が高いほど多くのエチレンを生成する(図1)。 2.果肉硬度はACCを処理することによって低下し、(図2)処理するACC濃度が高いほど、軟化後の果肉硬度が低くなる。適度な果肉硬度(約10N)まで軟化させるためには、10-20mMのACC溶液が適当である。 3.処理4日後の果肉硬度は、8日後まで維持される(図2)。 4.以上のことから、収穫後の硬肉モモ果実に10-20mMのACC溶液を処理することによって、果肉硬度を適度に軟化させ、その果肉硬度を8日後まで維持させることが可能である。 |
成果の活用面・留意点 | 1.実用化にあたってはACCの食品添加物としての登録等が必要である。 2.硬肉モモ「まなみ」でも同様の傾向を示す。 3.処理時の果実熟度が進んでいる場合や長期貯蔵した果実では処理によって軟化が進みやすい傾向があるため、実用化にあたっては処理条件をさらに検討する必要がある。 |
図表1 | |
図表2 | |
カテゴリ | 長期保存・貯蔵 もも |