タイトル | 耐冷、多収、低蛋白質の水稲酒造好適米新品種「彗星」(空育酒170号) |
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担当機関 | 道立中央農試 |
研究期間 | 2004~2009 |
研究担当者 |
田中一生 平山裕治 吉村徹 前田博 本間昭 相川宗嚴 田縁勝洋 丹野久 菅原圭一 宗形信也 柳原哲司 |
発行年度 | 2005 |
要約 | 水稲「空育酒170号」は大粒で心白を有する中生の酒造好適米系統である。千粒 重が重く多収であり、穂ばらみ期耐冷性が強く、蛋白質含有率が低い。「初雫」の全てと不適地に栽培されている「吟風」および「きらら397」などに置き替えて普及することにより、北海道の酒造原料米の品質向上と安定生産を図る。 |
キーワード | イネ、酒造好適米、大粒、心白、多収、耐冷、低蛋白 |
背景・ねらい | 現在北海道内で酒造原料米として3,205トン(平成16年)が使用されているが、このうち北海道米の占める割合は27.7%にすぎない。これらを反映して、平成17年度の道内の酒米作付面積は、「吟風」176ha(前年比72%)、「初雫」10ha(同53%)と、いずれも前年に比べ減少している。 この状況を打破して、北海道酒米の地位を確固たるものとし、作付面積の拡大を図るには、道内の酒造メーカーにおける北海道米の使用割合を高めることと、酒造好適米として道外への販路を拡大することが必要である。そのためには新品種の導入により、収量と品質の安定性の一層の向上が求められている。 |
成果の内容・特徴 | 1.水稲「空育酒170号」は平成8年に「北海278号」(のちの「初雫」)/「空育158号」(のちの吟風)の組合せの人工交配の雑種後代から選抜され育成された、中生の酒造好適米粳系統である。 2.出穂期と成熟期は「吟風」「初雫」「きらら397」並の“中生の早”である。 3.稈長は「吟風」「きらら397」並で、穂長は「初雫」より長く、「吟風」「きらら397」より短い。穂数は「きらら397」より少なく「吟風」「初雫」より多い。草型は「吟風」、「初雫」と同じ“中間型”。 4.耐倒伏性は「吟風」並の“やや強~強”である。障害型耐冷性は、穂ばらみ期の耐冷性が「吟風」「きらら397」より強く、「初雫」より弱い“強”であるが、開花期耐冷性 は「きらら397」より弱く「吟風」並の“極弱”である。いもち病真性抵抗性遺伝子型は“Pik”と推定される。葉いもち抵抗性および穂いもち抵抗性は「きらら397」より強い“やや強”である。 5.収量は「初雫」並に多収である。 6.千粒重は「吟風」「初雫」「きらら397」より重い。心白の発現は「吟風」より少なく小さい。玄米品質は「吟風」並の“中上”蛋白質含有率は「吟風」より低く「初雫」「きらら397」並である。 7.酒造適性について「吟風」に比べ精米時間がやや長く、水時間は少し長めで、硬い印象がもたれる。原料処理、蒸米および製麹作業性が「吟風」並に良好である。酒質が「吟風」と異なり、きれいなタイプの酒質を好む業者に評価される。 |
成果の活用面・留意点 | 1.上川(士別市以南)、留萌(中南部)、空知、石狩、後志、胆振、日高、渡島、檜山各支庁管内の低蛋白質米安定生産が可能な良地帯に適応し、「初雫」の全部、および「吟風」と「きらら397」の一部に替えて、1,000haの普及が見込まれる。 2.初期分げつが少ない傾向にあるので、栽培基準の栽植密度を守り、側条施肥など初期生育を促進する栽培法を心がける。 3.蛋白質含有率が高いと酒質を低下させる原因となるので、多肥栽培は避ける。 平成17年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「水稲新品種候補「空育酒170号」」(普及奨励) |
図表1 | ![]() |
カテゴリ | いもち病 酒造好適米 新品種 水稲 施肥 抵抗性 抵抗性遺伝子 |