タイトル |
金時類の茎折れリスク低減と土壌・作物栄養診断による高品質安定生産技術 |
担当機関 |
道立十勝農試 |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
加藤 淳
奥山昌隆
竹内晴信
中津智史
江部成彦
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発行年度 |
2007 |
要約 |
金時類の茎折れには品種間差があるが、標植、適正施肥でそのリスクを低減でき、開花期の追肥が効果的である。土壌無機態窒素量(0-40cm)と熱水抽出性窒素量(10cm土層相当量)から必要窒素施肥量を決定でき、開花期の葉柄硝酸態窒素濃度から追肥の要否を判断できる。
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キーワード |
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背景・ねらい |
近年、金時類では、過繁茂、倒伏、茎折れ、葉落ち不良などが発生し、収量の減少のみならず、品質低下や収穫遅延を引き起こし、問題となっている。特に、生育期間中に主茎が初生葉節部分で折れる「茎折れ」は、平成15年に十勝管内で多発し、栽培面積の28%で被害が認められた。 そこで本研究では、茎折れリスクを低減するための栽培管理条件を明らかにし、土壌の窒素肥沃度や金時類の窒素栄養特性に対応した土壌・作物栄養診断技術を開発する。これら合理的な窒素施肥管理を行うことにより、環境負荷を低減し、金時類の高品質安定生産を図る。
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成果の内容・特徴 |
- 茎折れの発生には品種間差異が認められ、「福良金時」で発生しやすい傾向にある。また、茎折れが最も発生しやすい時期としては、開花2~3週間後頃の急激に個体の生育量が増大する時期である(図1)。
- 茎折れは多肥または疎植条件で発生しやすい傾向にあり、有機物の過剰投入は、倒伏および成 熟期の葉落ちの悪化につながる。また、標植(16,700本/10a)かつ適正な窒素施用水準では、 開花期頃の窒素追肥により茎折れの発生はほとんど助長されない(図2)。
- 追肥により子実タンパク含有率は上昇し、合計窒素施用量が同じ場合には、追肥(分施)によって百粒重の増加および皮切れ率の低下が認められる。
- 重窒素を用いた窒素吸収試験の結果から、子実および豆殻(茎および莢)とも全窒素吸収量の85%程度が0~40cmの土層に由来しており(図3)、金時類の土壌無機態窒素診断は0~40cm土層で評価可能である。
- 子実収量は作物体の窒素含有量を説明変数とした回帰式により説明することが可能であり(図4)、その圃場における通常レベルの想定収量を得るために必要な窒素施肥量は、土壌の無機態窒素量(NN 0-40cm)および熱水抽出性窒素量(ACN 10cm土層相当量)から算出可能である。
- 開花期における葉柄から水抽出した硝酸態窒素濃度は、窒素施肥量に応じて高くなる傾向にあり、初期生育における窒素栄養状態を反映している(図5)。 開花期の葉柄硝酸態窒素濃度が概ね0.3%を超えている場合には、追肥は不要と判断される。
- 本試験で開発された土壌診断および作物栄養診断技術(図6)の活用により、生育過程の茎折れリスクを軽減し、高品質な金時類の安定生産(現行収量水準250kg/10a程度)が可能となる。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は、金時類の高品質安定生産と環境負荷の低減を目指した、施肥対応技術として活用できる。
- 本試験における土壌窒素診断では、根粒菌による窒素固定は考慮していない。
- 本試験は、収量レベル160~320kg/10a、熱水抽出性窒素(ACN)2~14mg/100gの圃場で行 った。また、泥炭土では試験を行っていない。
平成19年度北海道農業試験会議(成績会議)における課題名および区分 「金時類の茎折れリスク低減と土壌・作物栄養診断による高品質安定生産技術」(普及推進)
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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図表5 |
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図表6 |
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カテゴリ |
栄養診断
栽培技術
施肥
土壌診断
品種
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