中国紅壌丘陵地帯水稲二期作地域におけるアンモニア揮散とその制御〔研究〕

タイトル 中国紅壌丘陵地帯水稲二期作地域におけるアンモニア揮散とその制御〔研究〕
担当機関 (独)国際農林水産業研究センター
研究期間 1997~2003
研究担当者 徐明崗(中国農科院土壌肥料研究所)
申華平(中国農科院紅壌実験站)
秦道珠(中国農科院紅壌実験站))
八木一行(農環研)
宝川靖和
李菊梅(中国農科院土壌肥料研究所)
李冬初(中国農科院紅壌実験站)
発行年度 2002
要約 中国湖南省祁陽県においては、水田からのアンモニア揮散ポテンシャルが極めて高い。肥効調節型肥料の適切な利用により、アンモニア揮散による肥料成分の損失と環境負荷を大幅に軽減し、収量の維持向上と減肥の両立が可能となる。国際農林水産業研究センター・生産環境部
背景・ねらい 近年の人口増加と食生活の多様化にともない、中国農業は質的・量的に大きく変化し、環境に対する悪影響が顕在化している。特に集約農業地域においては、施肥にともなう環境への窒素負荷が懸念されている。重要な穀倉地帯のひとつである紅壌丘陵地帯の典型的な水稲二期作地域に位置する湖南省祁陽県を対象に、農業活動にともなう窒素による面源環境負荷の実態を把握するとともに、その軽減技術を開発する。

成果の内容・特徴
  1. 慣行の速効性尿素および肥効調節型被覆尿素(早稲: LPS60, 晩稲:
    LP70(40%)+LPS100(60%) )を用い、それぞれ水稲一作あたり慣行水準の150 kg N ha-1およびその半量の75
    kg N ha-1を湛水後に施肥し、その他条件を同一とした試験区(順に、速効150区、75区、肥効調節150区、75区)を3反復で設定する。各試験区からのアンモニア揮散ポテンシャルをオープンチャンバー法により測定し、その他指標データをモニタリングする。
  2. 早稲・晩稲作付期の積算アンモニア揮散ポテンシャルは、速効150 区で施肥量の35%に達するが、速効75区、肥効調節150区および肥効調節75区ではそれぞれ21、11および10%に軽減される(図1上)。
  3. 速効区では、施肥後約1週間、田面水中の高アンモニア態窒素濃度(図1中)および高pH(図1下)が観察される。これは、同区で高いアンモニア揮散ポテンシャルが観察された時期と一致する。
  4. 肥効調節75区では、速効150区と有意差のない籾収量が得られ、肥効調節150区(晩稲期に、いもち病および紋枯病が多発した)に優った(図2)。
  5. 肥効調節型肥料の適切な利用により、速効性尿素を施用した対象地水田において認められた極めて高いアンモニア揮散ポテンシャルを大幅に引き下げ、収量の維持向上と減肥を両立できるといえる。

成果の活用面・留意点
  1. 非アルカリ性土壌を主体とする我が国では、アンモニア揮散は特殊な例を除き無視できるものとして注目されてこなかったが、同じ非アルカリ性土壌(pH(H2O)
    6.5)の対象地水田において極めて高いアンモニア揮散ポテンシャルが確認された。両者における肥培管理・水管理法や土壌環境等の違いに着目することで、環境負荷軽減のための新たな研究展開が期待できる。
  2. 肥効調節型肥料の利用によりアンモニア揮散を軽減可能であることが初めて明らかとなった。現地で容易に利用可能なその他の緩効性肥料として堆きゅう肥等が挙げられるが、これらの草地への施用がアンモニア揮散を増大させたという報告例もある。水田においては、これら緩効性肥料の施用効果について十分な検討がなされてきたとはいえず、環境負荷軽減のための新たな研究展開が期待できる。
  3. 肥効調節型肥料の中国での普及を図るには、経済的な視点からの評価も必要となる。
  4. オープンチャンバー法によるアンモニア揮散の測定(本研究における流速は、国際標準と考えられる毎分チャンバー体積の15倍以上とした)では、厳密には実揮散速度ではなく、揮散ポテンシャルが求められる。

カテゴリ 肥料 いもち病 水田 水稲 施肥 土壌環境 肥培管理 水管理 モニタリング

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