野菜作経営の雇用実態と労務管理

タイトル 野菜作経営の雇用実態と労務管理
担当機関 千葉県農業試験場
研究期間 1994~1996
研究担当者
発行年度 1997
要約 野菜作経営、特に露地野菜における雇用導入は著しく増加している。施設野菜では年齢構成が多様で常雇中心だが、露地野菜では高齢女性を臨時に雇用する形態が極めて多い。雇用規模の大きな経営では、給与水準ではなく法定外福利を増大させることによって雇用労働の定着化を図っている。
背景・ねらい 経営発展をしようとする経営は、外延的な規模拡大を図ったり、施設導入、加工部門導入等による事業多角化などでビジネスサイズの拡大を図っている。そこでの重要な要素のひとつに雇用労働力の導入があるが、雇用労働力をうまく活用するためには適切な管理が不可欠である。そこですでに雇用を導入している経営の実態を把握し、雇用労働力を活用する上での留意点を明らかにした。調査にあたっては露地野菜経営と露地野菜+簡易施設経営を中心としたが、雇用規模の大きな事例が少ないため、施設園芸経営も含めた。
成果の内容・特徴
  1. 85年から95年までの雇用動向をみると(農業センサス関東・東山・東海地域合計)、施設園芸では年雇雇い入れ農家数が5.8倍、人数で5.4倍に増加しているが、野菜ではそれぞれ14.5倍、18.3倍と著しく増加している。
  2. 千葉県における部門別雇用形態と被雇用者の年齢分布をみると(表1、表2)、施設野菜では常雇および通年パートが多いが露地野菜では58%が随時雇用のパートである。年齢構成では施設野菜が50代を中心に30~60代以上まで幅広く雇用しているのに対し、露地野菜では60歳以上が57%と多い。
  3. 賃金水準は調査農家の平均で752.9円/時(標準偏差138.1円)であるが、雇用規模と賃金水準をみると賃金の分散が小さく規模間に差があるとはいえない(表3)。また、被雇用者間に賃金の格差を付ける経営はまれである。ボーナスは雇用規模と関係なくおよそ半数の経営で支払っているが、報奨、昇給、技能手当などを制度化している経営は非常に少ない(表4)。
  4. 被雇用者の募集方法は雇用規模によって異なり、20名を越えるような経営では、折り込み広告などの手段が用いられるが10名未満の経営ではすべて口コミによって募集している。また、雇用規模の大きな経営では、雇用日数・就業時間など個別の事情を考慮した雇用方法を採って、雇用定着を図っている経営が半数あった(表4)。
  5. 雇用規模の大きい経営は職場環境を重視している。休憩室の設置、トイレの設置、食事会の開催は常時雇用数が大きいほど実施されている(5%水準で有意)。また、作業服貸与は10%水準で、慰安旅行の実施は20%水準でそれぞれ有意であった(表5)。したがって雇用規模の大きい経営は、賃金格差よりも職場環境の整備をすることによって雇用の定着を図っているといえる。
  6. 雇用導入・定着・活用に際して以上の諸点をふまえて指導することにより、よりスムーズな雇用労働力活用が可能になる。
成果の活用面・留意点
  1. 雇用導入に当たっては、個々の経営の置かれた状況(収益性、地域労働市場の状況など)に留意する必要がある。従ってあらかじめ雇用導入後の経営状況を試算することが重要である。
  2. 上述の諸点を含め、雇用労働力導入・活用に関して考慮すべき事項の詳細に付いては「雇用型経営のための作業・労務管理マニュアル」(平成10年刊行予定)を参照のこと。
図表1 215522-1.gif
図表2 215522-2.gif
図表3 215522-3.gif
図表4 215522-4.gif
図表5 215522-5.gif
カテゴリ 加工 規模拡大 経営管理 施設園芸 なす

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