家畜糞堆肥連用圃場における亜鉛の動態

タイトル 家畜糞堆肥連用圃場における亜鉛の動態
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 近畿中国四国農業研究センター
研究期間 2002~2003
研究担当者 堀 兼明
福永亜矢子
須賀有子
浦嶋泰文(東北農研)
尾島一史
池田順一
発行年度 2003
要約 家畜糞堆肥を多量に連用すると全亜鉛が深さ30cmまで土壌に蓄積し、殆どの土壌で塩酸可溶性亜鉛も増加するが著しく低い事例がある。また、家畜糞堆肥連用土壌では全亜鉛含量と可溶性銅含量に相関関係はなく、全亜鉛含量120ppm程度ではタマネギ中の亜鉛含量を高めない。
キーワード 家畜糞、亜鉛、銅、微量要素、土壌汚染、管理基準、減化学肥料栽培
背景・ねらい 近年の野菜の生産戦略の一つとして、有機物を積極的に利用した有機・減化学肥料栽培により消費ニーズに応える流れがある。しかし家畜家禽糞に偏った施肥管理体系においては、重金属の蓄積が懸念される。特に亜鉛は必須微量要素(可溶性亜鉛:4~40ppm)であると同時に重金属蓄積の管理指標元素とされており、環境庁水質保全局長通知(1984)により、全亜鉛120ppmが管理基準値として定められている。そこで、家畜糞堆肥連用試験圃場における亜鉛の動態と、減化学肥料栽培および有機栽培農家圃場における亜鉛蓄積の実態を解析する。
成果の内容・特徴 1.
家畜糞堆肥12作連用試験土壌の全亜鉛含量は、牛糞堆肥では標準施用量(Nで18kg/10a)以下では蓄積は認められず、3倍量区で作土にやや蓄積が認められる。豚糞堆肥では、半量区では蓄積が認められないが、標準施用量区ではやや蓄積が認められ、3倍量区ではマルチの有無に関わらず30cmの深さまで120ppm以上の蓄積が認められる(表1)。
2.
牛糞堆肥を主な肥料として野菜を栽培する39圃場では、全亜鉛と可溶性亜鉛との間に概ね相関があるが、10圃場で120ppm以上の全亜鉛含量が認められる。この内、1圃場の可溶性亜鉛が4ppm未満であるが(図1)、可給態リン酸含量が約900mg/100gと著しく高いことからリン酸による亜鉛の不可給化または有機態亜鉛化による不可給化が推察される。
3.
家畜糞堆肥を連用した農家圃場の土壌の全亜鉛含量と可溶性銅含量との間に相関関係はみられず、全亜鉛含量が120ppm以上であっても、可溶性銅含量は25ppm以下である(図2)。
4.
牛糞堆肥、豚糞堆肥などの家畜糞堆肥を19作連用した試験圃場におけるタマネギ球部の亜鉛含量は、土壌の全亜鉛蓄積が明瞭な豚糞堆肥3倍量区ではタマネギの亜鉛含量が高い。しかし、土壌中の亜鉛含量の低い化成区より低濃度である(表2)ことから、土壌に蓄積した亜鉛は作物に吸収され難い形態のものであると判断される。また、このタマネギの亜鉛含量は、食品成分表の値(乾物換算19ppm)と比較してさして高い値ではない。
成果の活用面・留意点 1.
全亜鉛含量を重金属蓄積の指標とする土壌管理基準を設ける理由となった下水汚泥やし尿汚泥等の資材の場合は全亜鉛と可溶性銅含量に相関があるが、家畜糞堆肥連用土壌では全亜鉛と可溶性銅含量との間に相関関係が見られないことから、亜鉛及び重金属蓄積に関するデータの蓄積をさらに進め、これらの適正な指標の検討に資する必要があると考えられる。
2.
有機栽培・減化学肥料栽培では、過剰なリン酸の蓄積が亜鉛欠乏を引き起こすおそれがあるので家畜家禽糞だけに偏らず、窒素含量がリン酸やカリに比して高い、例えば油粕のような肥料を併用することが望ましい。
図表1 219775-1.gif
図表2 219775-2.gif
図表3 219775-3.gif
図表4 219775-4.gif
カテゴリ 有機栽培 肥料 施肥 たまねぎ

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