タイトル |
限外ろ過濃縮法による弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルスの高力価製剤の作製 |
担当機関 |
京都農資セ |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
安原壽雄(京都微研)
小坂能尚
片桐伸行(京都微研)
梁宝成(京都微研)
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発行年度 |
2006 |
要約 |
中空糸膜フィルターを用いた限外ろ過により、弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルスのカボチャ 感染葉の磨砕汁液を濃縮すると、その倍率から試算される感染価までほぼ理論値どおりに上昇し、 高力価製剤を効率よく作製できる。
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キーワード |
限外ろ過、弱毒ウイルス、高力価製剤、ズッキーニ黄斑モザイクウイルス
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背景・ねらい |
弱毒ウイルスを利用したウイルス病防除技術の普及には、保存安定性や利便性に優れた高力価製剤の 作製が望まれる。そこで、既にキュウリにおいて実用化している弱毒ズッキーニ黄斑モザイクウイルス (ZYMV)製剤の含有ウイルス濃度をさらに高めるため、植物ウイルスでは初めてとなる限外ろ過を 利用したウイルス液濃縮法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- 限外ろ過には、ポリスルホン系中空糸膜フィルター(400kD)を用いる (図1)。
- 弱毒ZYMV(ZYMV-2002)をカボチャ(えびす)幼苗に汁液接種し、その2~3週間後に第2~4本葉を それぞれ採取して凍結保存する。この感染葉の磨砕汁液から得られる遠心上清をウイルス液として 限外ろ過に供試する(図2)。
- 膜面積3,100cm2のモジュールであれば、ウイルス液約5,000mlの30倍濃縮に要する時間は 約2.5時間で、この間の操作はいっさい不要である。ろ過廃液から感染性ウイルスはまったく検出されない。
- 濃縮したウイルス液に、母液(3種類の安定剤を含む0.1M K-PB)を等量加えてバルクとし、 これを凍結乾燥する(図2)。
- これらの工程によって得られるバルク及び凍結乾燥品の50%感染価(50%のカボチャ個体が感染する ウイルス量:単位log10ID50/0.3ml)は、元の上清から濃縮倍率により試算される 理論値とほぼ同じである(表1)。
- 試作された製剤を0.1M K-PBで100倍(2.2 log10ID50)に希釈し、 カーボランダム法によってキュウリ幼苗の完全展開した子葉(接ぎ木前日に相当)に擦り付け接種すると、 品種や育苗環境条件の違いにかかわらずZYMV-2002が100%の株率で感染する。
- 以上のように、限外ろ過を利用するとウイルス液が効率よく濃縮され、弱毒ZYMVの高力価製剤を 省力的に作製できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 限外ろ過の濃縮度は、元のウイルス液量とろ過膜の面積を増やすことによって100倍程度まで 可能である。
- ZYMVと粒子形態が大きく異なるキュウリモザイクウイルスでもほぼ理論値どおりに感染価が 上昇することから、本法の汎用性は高い。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
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