タイトル |
二毛作「水稲+麦」の収量および品質に及ぼす長期リン酸無施用の影響 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
1951~2008 |
研究担当者 |
河野 哲
牛尾昭浩
桑名健夫
三好昭宏
小河 甲
望月 証
牧 浩之
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発行年度 |
2008 |
要約 |
二毛作「水稲+麦」体系において稲わら非還元ほ場でリン酸無施用を継続すると、水稲収量は約50年間は三要素を施用した場合とほぼ同等であるが、麦の収量は施用後20年目以降は最高でも三要素施用の30%程度となる。
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キーワード |
三要素長期連用試験、二毛作、水稲+麦、リン酸無施用、収量、品質
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背景・ねらい |
肥料価格の高騰化に対して、現場でも施肥体系の見直しが急務となっている。本県では、1951年から肥料三要素施用試験を「水稲+麦」の二毛作体系で58年間継続している。ここでは、稲わらを還元しないほ場において、リン酸無施用の影響を水稲と麦の収量推移および品質から検討し、リン酸肥料の効率的な施用法のために役立てる。
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成果の内容・特徴 |
- 「水稲+麦」の三要素長期連用試験の試験規模は1区30㎡(コンクリート枠)、土壌は灰色化低地水田土、細粒質、粘質「12522」である。生育および収量調査は2カ所で実施している。施肥は硫安、塩加、過石による分施、施用量は各年ごとの施肥基準とする。
- リン酸無施用での水稲収量は、試験開始から47年間は三要素を施用した場合とほぼ同等の収量比である。しかし、48年目(1998年)以降の平均収量比は三要素施用の71%になり、現在もほぼ同等である(図1)。
- 麦の収量では、リン酸無施用による低下が試験開始直後からみられる。1966年から1985年までの20年間の平均収量比は、三要素施用の7%となる。その後、移転による土壌撹拌とpH調整により、収量比は30%程度で推移している。(図2)。
- 長期リン酸無施用が二毛作体系の米および麦の品質に与える影響は、三要素を施用した場合と比較して、玄米品質においては大差がない。しかし、小麦粉のタンパク質とグルテンは非常に高くなる(表1)。なお、これらの知見は穂部の分析においても、毎年同様の傾向を認めている(データ略)。
- リン酸無施用土壌のリン酸含有率を形態別に三要素施用土壌と比較すると、全リン酸は約4分の1と非常に少なくなる一方、有機リン酸は増加する。また、無機態リン酸含有率も大きく低下するが、中でもAl型の占める割合が少なくなる。可給態リン酸も非常に少なく、トルオーグ法においては未検出である(表2)。
- 以上の結果、「水稲+麦」体系におけるリン酸無施用の影響は、麦収量に対しては大きいが、水稲に対してはほぼ50年間問題がなく、水稲に対するリン酸の必要性は低い。
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成果の活用面・留意点 |
- 本成果は瀬戸内西南暖地における二毛作体系「水稲+麦」のリン酸施肥の基礎資料として活用できる。
- 二毛作「水稲+麦」体系におけるリン酸肥料の施用は、水稲に対する必要性は低く、麦作前に行うのが良いと考えられる。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
水田
水稲
施肥
二毛作
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