タイトル |
透視度から推定したため池用水中の窒素の水稲栽培への有効利用 |
担当機関 |
兵庫農総セ |
研究期間 |
2005~2007 |
研究担当者 |
牛尾昭浩
桑名健夫
柴原藤善(滋賀農技セ)
松山 稔
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発行年度 |
2008 |
要約 |
植物プランクトンが濁りの原因となっているため池では、透視度から用水中の窒素含有量を推定できる。また、この用水中の窒素含有量から、水稲栽培における窒素減肥量が算出できる。なお、透視度10cm未満では慣行施肥量に対して2割減肥が可能である。
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キーワード |
透視度、ため池、用水、水稲、全窒素、吸収利用率、減肥
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背景・ねらい |
都市近郊のため池用水は窒素濃度が高く、水稲作では登熟歩合の低下、玄米窒素含有率の上昇等の影響がある。そのため、環境負荷低減、低コスト安定生産、良食味のためには、減肥することが望ましいと考えられる。そこで、簡易な用水中窒素濃度の測定方法を検討し、用水中窒素の水稲利用率と水稲用水量を求めて、減肥量の簡便な算出法を提案する。
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成果の内容・特徴 |
- 植物プランクトンが濁りの原因となっているため池では、透視度から全窒素濃度が推定でき、透視度10cm未満では、全窒素濃度が5mg/lを超えると考えられる(図1)。
- 水稲生育期間中の全用水量は1,244t/10aであり、幼穂形成期までに54%、それ以降46%が供給される。用水によりほ場へ供給される窒素量は全窒素濃度6.6mg/lでは、8.5kg/10aと推定される(表1)。
- 水稲栽培期間中のため池用水中全窒素濃度を1週間毎に測定した結果、高濃度のH池で平均6.7mg/l、低濃度のL池で平均3.0mg/lとなり、田植え前の時期(5~6月頃)の濃度がほぼ年間平均値を示し、この時期の透視度を指標にして減肥量を算出できる(図2)。
- 透視度による減肥量は、10cm未満では2.4kg/10aで、兵庫県南部平坦地域でのヒノヒカリにおける標準窒素施用量9kg/10aに適用すると減肥率は20%以上となる。10~20cmでは10~20%、20~30cmでは10%、30cm以上では減肥の必要性は少ない(表2)。
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成果の活用面・留意点 |
- 兵庫県南部平坦地域での普通期栽培のヒノヒカリに適用できる。各種条件(土壌、品種、肥料、用水量、窒素濃度)の異なる地域では、減肥率の微調整を行うことにより、適用が可能である。
- 濁りの原因が植物プランクトンで用水の色が緑色の場合に適用可能であり、粘土粒子が濁りの原因である場合は適用しない。また、浄化処理水が流入するため池の場合は、透視度が高くても無機態窒素濃度が高いので、周辺における処理施設の有無を確認しておく必要がある。
- 透視度計がない場合は、ペットボトル等で自作したものを使用することも可能である。標示板は、白地に0.5mm太さの黒二重十字線、線の間隔を1mmで引いて作成する。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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図表4 |
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カテゴリ |
肥料
環境負荷低減
水稲
施肥
低コスト
品種
良食味
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