納豆菌の粘質物生産に関与する遺伝子の構造と機能解析

タイトル 納豆菌の粘質物生産に関与する遺伝子の構造と機能解析
研究期間 1996~1996
研究担当者 伊藤義文
稲津康弘
発行年度 1996
要約 納豆の糸引きに関与する遺伝子をクローニングし、その構造を解析した結果、comP相同遺伝子であることが明らかとなった。
背景・ねらい  納豆菌の粘物質の主成分はポリグルタミン酸であり、その多少は糸引き納豆の品質を左右する。この物質の生産量は培地成分や培養条件によって大きく影響を受けるが、そのメカニズムに関してはあまり知られていない。また、納豆菌のポリグルタミン酸生産は遺伝的に不安定であることが生産現場や納豆菌の育種においてはしばしば問題になっている。そこで本研究では、この菌よりポリグルタミン酸生産に関与する遺伝子を単離し、その構造と機能を解明することによって「納豆の糸引きの強さはいかに調節されるのか」また「それはなぜ不安定性なのか」という疑問に答えることを目的としている。
成果の内容・特徴
  1. トランスポゾンTN917-LTV1を含む温度感受性プラスミドpLTV1を納豆菌に形質転換した。高温培養による染色体へのトランスポゾン挿入の結果、ポリグルタミン酸生産能を欠損した変異株を選抜した。この株の染色体からDNAライブラリを作製し、TN917-LTV1近傍の1.4kbpDNA断片をプローブとしてプラークハイブリダイゼーションを行い、トランスポゾンによって不活化された遺伝子を含むクローンを得た(図1)。DNA塩基配列決定の結果、この遺伝子は枯草菌のcomP遺伝子と相同であることが判明した(図2)。この遺伝子は対数増殖後のDNA取り込み、プロテアーゼやアミラーゼなどの菌体外酵素ならびに二次代謝産物(サーファクチン)の生産の制御に関与する。またその遺伝子産物であるComP蛋白は細胞外部の情報をキャッチするシグナルセンサードメインとその情報をリン酸基転移によって細胞内部の蛋白質にリレーするヒスチジンキナーゼドメインを持つことが知られている。遺伝子配列の比較によれば納豆菌のComP蛋白のヒスチジンキナーゼドメインは枯草菌のそれと90%以上の相同性を示したが、シグナルセンサードメインは45%の
    相同性しか示さなかった(図3)。
  2. 自然突然変異によって生じたポリグルタミン酸非生産株の染色体構造を解析するためにTn917-LTV1挿入点近傍のDNA断片を用いてサザンハイブリダイゼーションを行った。変異株には1.5kbpの挿入が生じており、これが納豆菌のポリグルタミン酸生産の遺伝的不安定性の原因であることが示唆された。

成果の活用面・留意点
納豆菌の自然突然変異株のcomP遺伝子近傍にどのようなDNA断片が、どのような特異的なメカニズムで組み込まれるのかは、今後明らかにしていきたい。  
図表1 224464-1.gif
図表2 224464-2.gif
図表3 224464-3.gif
カテゴリ 育種

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