タイトル |
23. 筋電図による咀嚼中食品の物性解析 |
担当機関 |
食品総合研究所 |
研究期間 |
1998~1998 |
研究担当者 |
塩澤光一(鶴見大
穀類特性研)
歯)
神山かおる
大坪研一
豊島英親(素材利用部
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発行年度 |
1998 |
要約 |
咀嚼(そしゃく)筋筋電位計測を行うと、食品物性の違い及び咀嚼中に口腔内で起こる物性変化に伴う、咀嚼パターンの差異を筋電図により明らかにできる。
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背景・ねらい |
食品咀嚼中に知覚されるテクスチャーは、美味しさに大きく影響するだけでなく、高齢社会において重要問題となっている咀嚼・嚥下(えんげ)しやすい食品開発のキーワードである。食品物性の違いにより生じる咀嚼挙動の変化を、咀嚼筋筋電図により解析する。
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成果の内容・特徴 |
- 健康な成人を被験者として、閉口筋である咬筋、開口筋の顎二腹筋前腹、舌の動きを反映する顎舌骨筋、の皮膚上に表面電極を装着する(図1)。
- 咀嚼中の筋電図(図2)では、下顎を開く時に顎二腹筋と顎舌骨筋の、閉じるときに咬筋のリズミカルな活動が観察される。
- 嚥下前には咀嚼リズムが遅延し、嚥下開始時において、三つの咀嚼筋群が同時に活動する。咀嚼開始から嚥下開始までの時間(咀嚼時間)及び1回の咀嚼毎に、筋活動時間、インターバル、振幅、筋活動量(図2)を求める。これらを用いて、被験者間及び試料食品間での差異を考察する。
- 軟らかいゼラチンゲル、硬くてもろいピーナッツ、付着性の極めて高いモチを比較し、さらにテクスチャーに特色のあるアミロース含量の異なる米飯を試料とした。
- 食品テクスチャーの違いにより、最も大きく変化したのは咬筋筋電図である。このことは、テクスチャー情報による咀嚼運動の制御は、主に閉口筋活動に現れることを示唆している。
- 試料中最も硬いピーナッツは、咀嚼初期に最大の咬筋活動が見られるが、試料が粉砕された後は、急速に振幅が減少する。噛んでも粉々にならないゲル、モチ、米飯では大きな咬筋活動低下が起こらない。
- 筋電図における米試料間差は、咀嚼初期において大きく、咀嚼が進行するにしたがって差が見られなくなる。咀嚼初期の咬筋活動は米飯の硬さに、咬筋活動量とそれに続く顎二腹筋活動量の比は飯の粘りに対応している(図3)。
- 飲み込み易いゲルや米飯では、嚥下前に舌の運動量は変化しなかったが、ばらばらに粉砕されたピーナッツや付着性の大きいモチを飲み込める食塊にまとめるには、舌運動が必要であり、咀嚼後期における顎舌骨筋活動が大きくなる。
- 硬く、付着性が低く、粘りのない米飯ほど、咀嚼時間が延長する。
以上のように、筋電図より食品物性の差異、咀嚼中の物性変化を数量化できる。
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成果の活用面・留意点 |
- 食品物性知覚の個人差や、咬みやすさ、飲み込みやすさ等が調べられるため、高齢者、障害者等向けの食品開発の基盤となる。
- 咀嚼中に変化する食品物性の特徴が評価できる。
- 筋電位計測は被験者や測定条件による変動が大きい点、咀嚼力の絶対値が得られない点には注意すべきである。
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図表1 |
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図表2 |
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図表3 |
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カテゴリ |
ナッツ
ばら
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