ムチンとプロテオグリカンの溶液中の分子量分布と分子鎖構造評価

タイトル ムチンとプロテオグリカンの溶液中の分子量分布と分子鎖構造評価
研究期間 2001~2006
研究担当者 渡邊 康
発行年度 2004
要約 食品に関連するタンパク質には、不定形で結晶化のできないものやNMR解析には 適さない巨大分子である場合が少なくない。このような対象の一例であるムチンや プロテオグリカンの溶液中の分子量分布と分子鎖構造評価には、光・X線・中性子 溶液散乱法が有効である。
キーワード 巨大タンパク質多糖複合体、分子量分布、分子鎖構造、溶液散乱法
背景・ねらい 溶液中のタンパク質の分子量や分子サイズ・形状は、それを素材とした食品(構成物)の粘性やゲ ル化性などの物理特性に影響を与える主要な因子の一つである。また、これらの物性値はその素材の 機能や食品の品質に関連するものが少なくない。食品に関連するタンパク質は、不定形で結晶化がで きないものや、分子量が大きいためNMR解析が不可能である場合も多く、基本的な構造解析手法の 開発・改良も必要である。本研究では結晶化の成功していないムチンとプロテオグリカンを対象に、 光散乱測定による分子量分布の評価とX線および中性子溶液散乱測定による分子鎖構造の解析を行 い、同種の生体高分子の解析に資する知見の提供を目的とした。
成果の内容・特徴 1.ゲル電気泳動法では解析が困難なムチン(消化管粘膜などでの食品成分との相互作用の可能性が ある成分)の溶液中の分子量分布の評価には低角レーザー光散乱法が、比較的簡便な手法として 有効である(図1)。また、プロテオグリカン(軟骨の主要機能成分)やタンパク質の構造形成 中間体にも適用可能である(データ省略、文献2,5)。
2.分子量4万以上のタンパク質の構造解析はNMR測定ではきわめて困難な条件なので、結晶化の功していないNMR測定に適さないムチンの溶液中の構造解析にはX線溶液散乱法は有効であ る。さらに、溶液中のタンパク質の構造解析を目的としたX線溶液散乱測定システムの開発・改 良も重要である(文献3)。試料のX線吸収を散乱と同時測定するシステムの開発から、1Mまで塩化ナトリウム中でムチンの散乱パターンに変化がない結果が得られ、ムチンは生理的な条件 での塩による構造変化は示さないことがわかった(図2; 文献4)。
3.プロテオグリカンの様なタンパク質多糖複合体の分子鎖構造解析には中性子溶液散乱法が有効で ある。重水濃度を変化させたコントラスト変調法を利用した中性子散乱測定から、プロテオグリ カンはタンパク質コアに糖鎖が無数に分布して、溶液中で細長い分子形態であることが示唆され た(図3; 文献1)。
成果の活用面・留意点 光散乱測定装置は市販品があるので、目的にあった装置が利用できる。物理定数未知な試料につい ては、分子量評価のためには個々において工夫が必要である。放射光X線溶液散乱測定装置は、高エ ネルギー加速器研究機構やSPring8などにおいて、中性子溶液散乱測定装置は、日本原子力研究所や 東大物性研の共同利用施設などにおいて、研究課題審査を経て、広範囲な基礎的および産業分野の研 究者に利用が可能である。より高機能のタンパク質酵素デザインあるいは高品質の食品開発などに資 する知見が得られることが期待できる。
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