食品の形態によるみかけの重さの錯覚

タイトル 食品の形態によるみかけの重さの錯覚
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2008~2010
研究担当者 神山かおる
早川文代
和田有史
発行年度 2008
要約  食品の形態による視覚的な重さ推定には錯覚が存在する。細かく刻まれた試料、中でも千切りの試料の重さは顕著に過大評価される。この知見は高齢者食や病院食における摂取量のコントロールに応用できる可能性がある。
キーワード 錯視、マグニチュード産出法、食品の外観
背景・ねらい
 生ニンジンやカマボコ、キュウリをブロック状、もしくは千切りにし、それを嚥下できるまで咀嚼させる実験を行なうと、生ニンジンやキュウリなどでは同じ重さの場合は立方体状の試料の方が、千切り状の試料よりも咀嚼量が少ない。また、刻んだ食品でも、外観上の体積を立方体のものと同等にすれば、咀嚼量は立方体よりも減少する。これらのことから、一般的に高齢者の咀嚼負担を軽減する工夫として行われている食品を細かく刻むという加工は、結果として、咀嚼の負担を増やし、食べられる食品の量を減らすことになる。このような、刻み食と咀嚼負担に関する“誤解”は、視覚的な量の見積もりが、形態によって変化することが原因と考えられる。
 食経験において、視覚情報は非常に重要であることは古くから知られている。また、視覚において、日常的に錯覚 (錯視) が生じていることも心理学を中心とした視覚科学が示してきた。しかし、食品において錯視が生じていることを定量的に計測する試みはこれまでなかった。そこで、視覚による重さ推定に食品の外観が与える影響を明らかにする。
成果の内容・特徴
  1. 視覚による重さ推定に食品の外観が与える影響を検討するため、形態(立方体、千切り、さいの目切り)と重さを操作した食品(ニンジン・カマボコ)の写真をCRTディスプレイに提示した(図1)。11人の実験参加者がターゲットとなる重さに一致するようにみえる画像を選択した。
  2. 食品の形態による視覚的な重さ推定には錯覚が存在する。例えば、ニンジンでは、ブロック試料の5gを提示し、10gをそれぞれの形態で再生させると、ブロックでは9g、さいの目切りでは8.5g、千切りでは7.5g程度で10g程度に見えると推定される(図2)。
  3. 両試料の物理的な特性が異なるにも関わらず、実験参加者は立方体の試料については比較的正確に重さ推定ができる。
  4. 細かく刻まれた試料、中でも千切りの試料の重さを顕著に過大評価する。実際の試料の重さの増大に伴う外観的な体積の増加も千切りで最も顕著であり、これが、錯覚を生じさせる原因であると考えられる。(図3)。
成果の活用面・留意点
  1. 本研究は、食品の外観的な体積が視覚による重さ推定に影響することを示した。
  2. 視覚的な重さ推定における錯視が刻み食を多く食べられない一因である可能性がある。
  3. 視覚的な量の過大視が、食品を摂取した後の満足と相関するかどうかを知るには、今後更なる実験的な検討が必要である。

図表1 224662-1.jpg
図表2 224662-2.jpg
図表3 224662-3.gif
カテゴリ 加工 きゅうり にんじん

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