核酸塩基配列を認識してナノファイバーを形成するDNA-合成脂質集合体

タイトル 核酸塩基配列を認識してナノファイバーを形成するDNA-合成脂質集合体
担当機関 (独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所
研究期間 2007~2010
研究担当者 岩浦里愛
亀山眞由美
清水敏美(産総研)
発行年度 2008
要約  標的の核酸塩基配列が存在する場合のみナノファイバーとなるDNA-合成脂質集合体が形成される。
キーワード DNA、脂質、ナノファイバー、自己集合
背景・ねらい
 我々はこれまで、DNAの性質(四種類の核酸塩基が決まった相手とペアを作る)と、脂質の性質(液体中で自然に脂質分子同士が集合する)を合わせもつ合成脂質分子1をDNAとともに水中で混ぜるだけで、ナノスケール構造が得られることを明らかにしてきた。今回は、1とDNAとの混合水溶液中に、標的のDNAが存在する場合のみナノファイバーを形成させることに成功した。
成果の内容・特徴
  1. 合成脂質1を超音波照射および加熱(90 ℃)により0.1 F TEバッファー(Tris-HCl 1 mmol/L、EDTA 0.1 mmol/L、pH 8.0)へ溶解した。この溶液に、2、3(20塩基のアデニン部位と標的核酸4との相補鎖から成るオリゴヌクレオチド)を含む水溶液をそれぞれ加え、この混合液を三等分した。そのうちの二つには、標的核酸である4、または非相補鎖から成る5のオリゴヌクレオチドを加え室温で放置した(それぞれの系を1/2/3/4および1/2/3/5と表記する)。残りの一つはそのまま放置した(1/2/3)。それぞれの構造式、核酸塩基配列を図1aに示す。
  2. 得られた集合体を高配向熱分解黒鉛(HOPG)基板に滴下し、大過剰の水で洗ったものを原子間力顕微鏡(AFM)のサンプルとして用いた。また、0.5 ℃/minで温度を上昇させながら260 nmの吸光度変化を測定し、1/2/3/4、1/2/3、および2/3/4の0.1 × TEバッファー水溶液中での融解温度測定を行った。
  3. AFMによりそれぞれの多成分系自己集合体を観察した結果、1/2/3/4の系では長さが300 nm~3 mm、径が7~8 nm、らせんのピッチ52 nmのヘリカルナノファイバー構造が観察できた(図2a、b)。一方、1/2/3/5および1/2/3の多成分自己集合体はファイバー構造を形成せず、径が15 nm程度の球状構造を与えた(図2c、d)。この結果は、ヘリカルナノファイバー構造形成に標的DNAである4の存在が必要であることを示している。
  4. 次に、1/2/3/4、1/2/3、2/3/4の0.1 × TEバッファー水溶液を用いて15 ℃から70 ℃まで温度をゆっくりと変化させ、UV融解温度測定を行った。1/2/3および2/3/4の系で得られた融解曲線の一次微分から、それぞれの融解温度Tmは60 ℃および35 ℃と求められた。一方、1/2/3/4の系で同様の測定を行った結果、融解曲線は二相性の形状を示し、一次微分からTmは37 ℃および57 ℃と求められ2/3/4、および1/2/3のTmに近い値を示した。
  5. これらの結果から、1/2/3/4の多成分系自己集合体から形成されるヘリカルナノファイバー中では、まず1と2、3間の相補的核酸塩基対形成により前駆体が生成し(図1b I→II)、次に2、3と4間の相補的核酸塩基対形成によりヘリカルナノファイバー構造の伸長が促進される(図1b II→III)ものと推察された。
成果の活用面・留意点
  1. 標的核酸によるナノファイバー形成が可能であることを明らかにした。
  2. 本結果は、標的核酸の有無をナノファイバー構造として画像化できることから、DNAへの化学修飾が不必要でかつ微量DNAの迅速検出手法として期待できる。

図表1 224668-1.gif
図表2 224668-2.jpg
カテゴリ くり

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