タイトル |
高感度・高精度・迅速なシアナミド定量法 |
担当機関 |
[分類] |
研究期間 |
2001~2008 |
研究担当者 |
加茂綱嗣(信州大農)
荒谷博
藤井義晴
平舘俊太郎
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発行年度 |
2005 |
要約 |
シアナミド(H2NC≡N)をガスクロマトグラフ質量分析計 (GC/MS)で高感度に定量できる(検出限界:約1ng)。試料の前処理の段階で内部標準物質として(15N2)シアナミドを添加し同位体希釈法により定量すれば,より信頼性の高いデータとなる。
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背景・ねらい |
シアナミドは,1898年に初めてドイツで人工合成された含窒素化合物であり,植物生育調節作用を持ちつつも,土壌中では微生物によってアンモニアへ変換され肥料としても働く多機能性の農業用薬剤である。近年,著者らはシアナミドがヘアリーベッチ体内で生合成され植物生育阻害作用を示すことを明らかにし(Kamo et al., 2003),さらにその存在量や分布あるいは植物体中における生合成経路の解明研究を継続している。しかし,シアナミドは不安定かつ低沸点化合物であるため,試料の前処理段階(精製操作)において消失する可能性があり,従来のシアナミド分析法では問題点が多い。そこで,高感度・高精度・簡便・迅速なシアナミド定量法を開発する。
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成果の内容・特徴 |
- GC/MSに装着する分離用カラムとしてアミン化合物分析用キャピラリーカラムを選択することによって,シアナミドを定量分析可能なシグナルとして検出できる(図1A)。
- 本分析法による検出限界は約1ngである。また検量線は,20ng / 2 μL以上の高濃度分析では直線回帰モデルが,1~20ng / 2 μLの低濃度分析では対数モデルがよく適合する。
- 試料の前処理段階においてシアナミドが消失しデータの信頼性が低下する問題点は,前処理段階で内部標準物質として(15N2)シアナミドを加え,同位体希釈法によって定量を行うことで解決できる。すなわち,この内部標準物質をm/z 44(図1C),天然型の(14N2)シアナミドをm/z 42(図1B)のマスクロマトグラムのシグナルとしてそれぞれを特異的に検出し,これらのシグナル強度比(m/z 42)/(m/z 44)である同位体希釈率からシアナミド含量の定量値を算出できる。
- ヘアリーベッチ茎葉部に含まれるシアナミドを抽出するためには,アセトンあるいはエタノールを用いるのが効率的である。この抽出物の精製操作は,順相固相抽出カラム(固相:シリカゲル,抽出溶媒:ヘキサン-アセトン系)のみで十分である。
- ヘアリーベッチ茎葉部の抽出物中に含まれるシアナミドを,3段階の(15N2)シアナミド添加量で精製操作および定量分析を行うと,いずれの添加量でも同等の定量値が得られる(表1)。この値は,従来法の中で最も高感度かつ信頼性の高い方法(プレカラム誘導体化+HPLC法)で得られる値とも同等であるため,本法は従来法とも整合性が取れ,かつ回収率が低くても信頼できる有効な分析法と言える。
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成果の活用面・留意点 |
- 本分析法は,シアナミド濃度が極めて低い場合や,夾雑物が多く前処理(精製操作)が必要な場合に特に有効である。
- 高い信頼性を確保するためには,(m/z 42)/(m/z 44)値が0.1~5の範囲内で定量分析を行う必要がある。
- 市販の(15N2)シアナミドは高価である(50%水溶液1gで68万円)。
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図表1 |
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カテゴリ |
肥料
機能性
薬剤
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