豚テシオウイルスの特徴的なIRES(Internal Ribosome Entry Site)

タイトル 豚テシオウイルスの特徴的なIRES(Internal Ribosome Entry Site)
担当機関 (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 動物衛生研究所
研究期間 2001~2003
研究担当者 A. V.
H. L.
I. N.
L. S.
Belsham G. J.
Chard
Helen L.
Johns
Pisarev
Shatsky
加来義浩
坂本研一
山川睦
山添麗子
山田学
大橋誠一
発行年度 2003
要約 豚テシオウイルス(PTV)の組織指向性に関与すると考えられるInternal Ribosome Entry Site(IRES)が他のピコルナウイルスのそれと比較し著しく異なることを証明した。また、IRESの構造と機能及び細胞内蛋白との相互作用を解析し、他のウイルスとの比較を行ったところ、フラビウイルス科C型肝炎ウイルスとの相同性が高いことが示された。
キーワード ブタ、テシオウイルス、臓器指向性、IRES
背景・ねらい
 豚テシオウイルス(PTV)は、ピコルナウイルス科テシオウイルス属に属し、豚エンテロウイルス性脳脊髄炎の主病因と考えられている。PTVの感染後の体内動態については不明な点が多く、病性鑑定のための適切な時期・部位における採材を困難にしている。ピコルナウイルスの蛋白合成効率は、主にゲノム上の領域Internal Ribosome Entry Site(IRES)により規定されるため、ポリオウイルスではIRESの変異が組織指向性や病原性の違いを規定している例が報告されている。本研究では、PTVのIRESについてその機能領域を同定し、細胞内蛋白との相互作用を解析する。これにより、ウイルスの組織指向性を規定する因子についての基礎知見が得られ、感染動態の解明につながることが期待される。
成果の内容・特徴 1.
PTV-1 Talfan株ゲノムにおいて、5' non-translated region(5'NTR)のpoly(C)tract末端から開始コドンまでの405ntの領域を、5’側より段階的に欠失させた。これらをpGEM/CAT/LUC(図1)に挿入し、BHK21細胞にtransfectionした。同細胞におけるルシフェラーゼ(LUC)活性を測定したところ、5'側より125塩基欠失させたものまでは、野生型と同様のLUC活性を示していた。これにより、PTV-IRESの機能領域は最大でもnt126-405までの280ntに過ぎず、他のピコルナウイルスと比較して著しく短いことが分かった。また同領域には、ピコルナウイルスに特徴的なpoly-pyrimidine tractが認められなかった。
2.
PTV-IRES塩基配列は、他のピコルナウイルスのIRESよりもフラビウイルス科C型肝炎ウイルス(HCV)のIRESと相同性が高かった。また、HCV-IRESがリボソームや翻訳開始因子と相互作用する領域は、PTV-IRESにおいても、二次構造的によく保存されていることが推測された。
3.
PTV-IRESと相互作用する蛋白を一つずつ欠失させた結果、PTVの蛋白合成開始に必要な因子は、eukaryotic initiation factor(eIF)2のみであることが明らかになった。これは、他のピコルナウイルスと比較して著しく少なく、HCV-IRESと共通していた。
4.
以上より、PTV-IRESは、HCV-IRESと機能的および構造的に高い相同性を有し、ピコルナウイルスにおける新たなタイプのIRESであることが明らかになった。
成果の活用面・留意点 1.
今後、PTVの体内動態が明らかになれば、適当な時期・部位から少量を採材することにより、高感度の遺伝学的診断法を行うことが可能になる。
2.
PTVの体内動態を明らかにするためには、PTVの組織指向性を分子生物学的に解析することが不可欠である。そのためには、完全長ゲノムをクローニングしたうえでIRES変異体を作製することが必要である。
図表1 225776-1.gif
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