タイトル |
イネ種子寿命を制御する量的形質遺伝子座 |
担当機関 |
(独)農業生物資源研究所 |
研究期間 |
1999~2001 |
研究担当者 |
江花薫子
三浦清之
小島洋一朗
石井卓朗
長峰司
福岡修一
矢野昌裕
林少揚
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発行年度 |
2002 |
要約 |
イネ種子の寿命を制御する量的形質遺伝子座(QTL)を明らかにし、種子の貯蔵性に関するマーカー選抜育種の可能性を示した。
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キーワード |
イネ、種子、寿命、発芽、QTL
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背景・ねらい |
貯蔵中の種子活力の低下は、保存種子を利用する際の大きな問題である。イネ種子の寿命には品種間差があることが報告されているが、その遺伝様式は不明である。そこで、DNAマ-カ-を用いた種子の寿命に関するQTL解析を行い、寿命に関する量的形質遺伝子座を明らかにする。
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成果の内容・特徴 |
- 日本型品種「日本晴」と種子の寿命が長いインド型品種「Kasalath」の交配後代である 98の戻し交雑自殖系統(BILs)(BC1F9)の種子を材料とした。種子の寿命は1年間30℃、乾燥条件で貯蔵した後に2ヶ月間の加齢処理(種子水分含量15-16%、30℃)を施した種子の25℃、7日間の発芽率で評価した。全染色体に位置づけられた245個のRFLPマーカーを用いてQTL解析を行った結果、第2、4、9染色体上に「Kasalath」の遺伝子型が種子の寿命を延ばすQTLを見出した(図1)。このうち、第9染色体上のQTL(qLG-9)がもっとも大きな効果を示し、全体の変異の59.5%を説明した。これに対して他の2つは10%程度であった。
- 種子の一次休眠に関係するQTLは第1、3、5、7、11染色体に検出され、いずれも種子の寿命を支配するQTLとは異なる染色体領域に存在した(図1)。このことから、「Kasalath」の場合、一次休眠と種子の寿命とが異なる遺伝子座によって支配されていることを明らかにした。
- 「日本晴」の遺伝的背景にqLG-9のみを含む「Kasalath」の染色体領域を導入した染色体断片置換系統SL36およびSL39について加齢処理後の発芽率を調べたところ、Kasalathが 96.7%、日本晴が0%であるのに対して、置換系統は77%程度の発芽率を示し(表1)、qLG-9の単独の効果を確認した。
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成果の活用面・留意点 |
- 最大の効果を示したqLG-9については、単独での効果が認められたことから、このQTLを利用した種子の貯蔵性の育種的改良が可能である。
- qLG-9を基にした種子の寿命に関する遺伝子単離により、イネ品種の種子の寿命に関する遺伝子診断が可能となることから、ジーンバンク等での種子保存の効率化を測ることができる。
- 種子の寿命に関する遺伝子単離により、遺伝子の機能を明らかすることによって、イネ種子の寿命を制御するメカニズムを解明することができる。
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カテゴリ |
育種
乾燥
品種
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