タイトル | 小麦粉の生地物性を強める低分子量グルテニン遺伝子のPCR マーカー |
---|---|
担当機関 | (独)農業・生物系特定産業技術研究機構 北海道農業研究センター |
研究期間 | 2001~2005 |
研究担当者 |
伊藤美環子 加藤明/田引正 高田兼則 西尾善太 船附稚子 |
発行年度 | 2003 |
要約 | 分子量約42kDaの低分子量グルテニンサブユニット(LMW-GS 42K)は小麦粉の生地物性を強める。また、このサブユニットは高分子量グルテニンサブユニット5+10(HMW-GS 5+10)と相加的に作用して生地物性を強くする。このLMW-GS 42K遺伝子をPCRで簡便に検出することが出来る。 |
キーワード | 小麦、超強力性、低分子量グルテニンサブユニット、マーカー、PCR、育種 |
背景・ねらい | 小麦粉の生地物性が強い超強力小麦および強力小麦はパン・麺等に広く利用出来るが、北海道での栽培に適した品種は十分揃っていない。小麦粉の生地物性には高分子量グルテニンサブユニット(HMW-GS)の他に、低分子量グルテニンサブユニット(LMW-GS)が関与している。本研究では、(超)強力性に関与するLMW-GSを同定し、(超)強力小麦品種の育種に利用できる分子マーカーの開発を行う。 |
成果の内容・特徴 | 1. 超強力春まき小麦「Glenlea」および超強力秋播き小麦「KS831957」はHMW-GS 5+10とLMW-GS 42Kを持ち、LMW-GS 42K遺伝子の対立遺伝子に由来するLMW-GS 48Kを持つものより強い生地物性を示す(表1)。 2. LMW-GS 42K はHMW-GS 5+10と相加的に作用して生地物性を強める(表2)。 3. 小麦の幼葉から煮沸法により簡便にDNAを抽出し、低分子量グルテニン遺伝子の塩基配列をもとに設定した順方向プライマーHaruF1:5'-CCATCCAACAACAACCACACCA-3'と逆方向プライマーHaruR1:5'-CCCGAGTTGCTGTTGTGACTGC-3'の組み合わせでPCRを行うと、LMW-GS 42Kを持つ品種・系統に対して特異的に692bpのDNA断片が、LMW-GS 48Kを持つ品種・系統に対して特異的に839bpのDNA断片が増幅する(図)。 4. 春まき小麦「春のあけぼの」と「Glenlea」を交配して得られたB5F2世代の65個体および秋播き小麦「ホロシリコムギ」と「KS831957」の交配に由来する「勝系32号」(LMW-GS 48Kを持つ)と「勝系34号」(LMW-GS 42Kを持つ)のRIL(F6)の71のホモ系統に対して3.の方法でPCRを行うと、LMW-GS 42K を持つ個体に対して特異的に692bpのDNA断片が、LMW-GS 48Kを持つ個体に対して特異的に839bpのDNA断片が増幅する(図)。 |
成果の活用面・留意点 | 1. 超強力小麦系統および強力小麦系統を育成する際に本マーカーを用いれば、鉢上げ前の幼葉でサブユニット組成を予測出来るため、大幅に育種を効率化することが出来る。 |
図表1 | ![]() |
図表2 | ![]() |
図表3 | ![]() |
カテゴリ | 育種 小麦 品種 |