38.比抵抗トモグラフィ法によるフィルダム堤体内部の比抵抗モニタリング

タイトル 38.比抵抗トモグラフィ法によるフィルダム堤体内部の比抵抗モニタリング
研究期間 2000~2002
研究担当者 黒田清一郎
森 充広
石村英明(関東農政局より併任)
中里裕臣
長束 勇
渡嘉敷勝
畑山元晴(現 農村振興局)
民間(新技術研究開発組合)
発行年度 2002
要約 フィルダム築堤時にあらかじめ電極を埋設し,電極間に電流を流すことによって電流の流れやすさを調べる比抵抗トモグラフィ法による比抵抗モニタリング技術によって,堤体内部の含水状態を2次元的かつ長期的に監視でき,堤体の安全管理ができる。農業工学研究所・造構部・施設機能研究室
背景・ねらい 従来,築造後のフィルダムの安全管理は,堤体埋設計器の挙動観測や周辺地山ボーリング孔の水位観測等によって行われている。しかし,堤体埋設計器は落雷や経年劣化により埋設後数年でその信頼性が落ちる場合がある。さらに,これらの計器から得られるデータは点のデータであり,異常箇所を特定するのに必ずしも十分ではない。そこで,地下の比抵抗分布を2次元的に把握できる比抵抗トモグラフィ法を用い,フィルダム遮水部およびその周辺部の温度分布や含水状態を比抵抗変化としてモニターすることによって,遮水部の安全性を2次元的かつ長期的に監視する堤体安全管理技術を開発し,実証試験を行った。
成果の内容・特徴
  1. フィルダム築堤時にあらかじめ所定の位置に電極を埋設した(図1)。上下流断面は計47個,ダム軸断面は計94個の電極を設置し,比抵抗トモグラフィ法による計測を実施した。

  2. 試験湛水前に通常の水平電気探査と比抵抗トモグラフィ法による計測を行い,フィルダム堤体内部の比抵抗分布を求めた(図2)。堤体天端から行った水平電気探査では,フィルダム全体がフラットな層状の比抵抗分布として観測されているのに対し,比抵抗トモグラフィ法による結果では,基礎地盤の強風化花崗岩(CL級)は非常に高い比抵抗,閃緑岩は低い比抵抗を示しており,地質構造と対応した結果が得られた。このように,比抵抗トモグラフィ法では,水平電気探査では得られない分解能で比抵抗情報をとらえることができた。

  3. 試験湛水前(2001.9)の比抵抗分布を基準断面として,この断面から計算される理論抵抗値に試験湛水満水時(2001.11)と試験湛水時の観測電位差の比を乗じた値を差トモグラフィデータとし,このデータを逆解析するインバージョンを行い,変化率を調べた。方法は図3のとおりである。その結果,従来個別に逆解析を行ってその差をモニタリングする手法と比較して,数値計算によって生じる誤差を大幅に削減できた。

  4. 試験湛水前後の変化率をマッピングした結果(図4),比抵抗変動のある部分は,温度の変化した領域と一致する傾向があったが,間隙水圧が変化した領域との相関は,40日間という短い試験湛水の期間中に確認できなかった。これは,遮水材の透水係数(1×10-6cm/s)から判断すれば,妥当な結果であると考えられる。

  5. 堤体の盛立が完了し,すでに2年を経過しているが,今のところ電線に破断などの不具合はなく,初期欠陥は認められていない。

成果の活用面・留意点 試験湛水時の埋設計器の挙動観測等との比較の結果,比抵抗変動の要因は,水分変化,温度変化,堤体沈下による電極間隔の変化など,様々な要因が想定された。長期的に観測を継続することにより,比抵抗変動の影響度を評価する必要がある。

カテゴリ 安全管理 経年劣化 モニタリング

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